「逃げるが勝ち」ということわざを聞いたことがありますか?
「逃げる」というと少しネガティブな響きがあるかもしれませんが、このことわざは必ずしもそうではありません。むしろ、賢明な判断を示す言葉として使われます。
この記事では、「逃げるが勝ち」の意味や背景、どのような状況で使われるのか、そして関連する表現について分かりやすく解説します。
時には「逃げる」ことも大切だという、この言葉の知恵を探ってみましょう。
「逃げるが勝ち」の意味・教訓
このことわざは、形勢が不利な場合や、勝ち目のない争い、関わっても無駄なことからは、あえて争わずにその場を避ける(逃げる)ほうが、結局は自分のためになり、賢明な策であるという意味です。
無理に戦ったり、関わったりして損害を被るよりも、一時的に退くことで難を逃れ、結果的に良い状況を保つことができる、という考え方を示しています。
単なる敗北や臆病さを意味するのではなく、状況判断に基づいた戦略的な撤退を肯定的に捉える言葉です。
「逃げるが勝ち」の語源 – 戦略としての撤退
このことわざの明確な起源は定かではありませんが、古くから戦(いくさ)などの経験則として認識されていた考え方に基づいていると思われます。
中国の兵法書にある
「三十六計逃げるに如かず(さんじゅうろっけいにげるにしかず)」
(不利な状況では逃げるのが最上の策である)という言葉とも通じるものがあります。
無謀な戦いを挑んで全滅するよりも、一時撤退して態勢を立て直したり、損害を最小限に抑えたりすることの重要性が、このことわざの背景にあると考えられます。
「逃げるが勝ち」が使われる場面と例文
勝ち目がない勝負、無益な争い、危険が予測される状況などから、賢明な判断として距離を置いたり、回避したりする場面で使われます。
- 不利な競争や議論:明らかに勝ち目がない、あるいは議論しても平行線で無駄だと判断した場合。
- 危険な状況の回避:トラブルに巻き込まれそうな場所や、危険な状況から身を守るために離れる場合。
- 無益な争いを避ける:感情的な言い争いや、関わっても何の得にもならないような対立から距離を置く場合。
- 損切り:投資などで、これ以上損失が拡大する前に撤退する判断をする場合などにも比喩的に使われることがあります。
例文
- 「これ以上議論しても平行線だろう。ここは逃げるが勝ちだ。」
- 「あのグループの揉め事には関わらない方がいい。逃げるが勝ちだよ。」
- 「明らかに相手の方が実力が上だ。今回は無理せず、逃げるが勝ちと考えよう。」
「逃げるが勝ち」の類義語・関連語
争いを避けたり、危険から遠ざかったりすることの賢明さを示す言葉があります。
- 三十六計逃げるに如かず(さんじゅうろっけいにげるにしかず):多くの計略の中でも、形勢が不利なときは逃げるのが最上の策であるということ。
- 君子危うきに近寄らず:教養や徳のある人は、自ら危険な場所や状況に近づかないということ。
- 触らぬ神に祟りなし:余計なことに関わらなければ、災いを招くこともないというたとえ。
- 負けるが勝ち:相手に勝ちを譲ることが、長い目で見れば自分にとって有利な結果につながる場合があること。状況によっては「逃げるが勝ち」と近い意味合いになる。
「逃げるが勝ち」の対義語
危険を顧みずに立ち向かうことや、挑戦することの重要性を示す言葉が対照的です。
- 当たって砕けろ:成功するか失敗するかわからなくても、思い切って行動してみよ、ということ。
- 虎穴に入らずんば虎子を得ず:危険を冒さなければ、大きな成果は得られないということのたとえ。
- 背水の陣:一歩も退くことのできない絶体絶命の状況で、決死の覚悟で戦うこと。
「逃げるが勝ち」の英語での類似表現
英語にも、逃げることや退くことが賢明であるという考えを示すことわざがあります。
- He who fights and runs away may live to fight another day.
意味:戦って逃げる者は、生きてまた別の日に戦うことができるだろう。一時的な撤退の重要性を示す。 - Discretion is the better part of valor.
意味:思慮分別(慎重さ)は勇気の大半を占める。つまり、無謀な勇気よりも慎重な判断の方が重要であるということ。シェイクスピアの戯曲に由来する。 - Sometimes it’s better to walk away.
意味:時には立ち去る(逃げる)方が良いこともある。
まとめ – 賢明な撤退も勇気
「逃げるが勝ち」は、不利な状況や無益な争いから賢明に身を引くことの重要性を教えてくれることわざです。
「逃げる」という言葉には消極的なイメージが伴いがちですが、このことわざは、状況を冷静に判断し、あえて戦わない、関わらないという選択を肯定的に捉えています。
何でも真正面からぶつかることだけが勇気ではありません。時には戦略的に退くことも、将来のために必要な賢明な判断であり、一種の勇気と言えるでしょう。
この言葉は、柔軟な思考と状況判断の大切さを私たちに示唆してくれます。
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