「背水の陣」の意味・語源・由来
意味
一歩も退くことのできない状況で、決死の覚悟で事に当たることのたとえです。
川を背にして陣を敷き、退路を断つことで兵士を必死に戦わせる状況を表します。
失敗すれば後がない、ぎりぎりの状況で全力を尽くすという意味合いで使われます。
語源・由来
中国の漢の時代の武将・韓信が、趙の軍と戦った際に用いた戦法に由来します。
韓信は、自軍の兵士たちを川を背にして配置しました。
退路がない状況に追い込むことで、兵士たちは死に物狂いで戦い、見事勝利を収めました。
この故事から、「背水の陣」という言葉が生まれました。
「背水の陣」の使い方(例文)
- 今期の業績が赤字だと、来期はもう背水の陣で臨むしかない。
- 彼は背水の陣で試験勉強に取り組み、見事合格を果たした。
- チームは背水の陣で決勝戦に臨み、逆転勝利を収めた。
- このプロジェクトは、会社にとって背水の陣を敷く覚悟で取り組むべき重要なものだ。
- もう後がない彼は、背水の陣の覚悟で告白した。
注意! 間違った使い方
- 彼は風邪をひいて体調が悪かったが、背水の陣で仕事に行った。(誤用)
※「背水の陣」は、本当に後がない状況で使われる言葉です。
体調不良で無理をすることに対して使うのは適切ではありません。
「背水の陣」の文学作品などの用例
楚漢戦争とも呼ばれる項羽と劉邦二人の争いは、国士無双、背水の陣、四面楚歌など多くの故事を生み出したことでも知られています。
司馬遼太郎の小説『項羽と劉邦』には、韓信が背水の陣を敷く場面が詳細に描かれています。
以下はその一部の引用です。
韓信は、河をせにしてふみとどまれ、とうながした。兵は、うしろが河とあっては、にげられない。死を決してたたかうであろう。
「背水の陣」の類義語
- 乾坤一擲(けんこんいってき):運命をかけて、のるかそるかの大勝負をすること。
- 捨て身(すてみ):命を捨てる覚悟で物事に当たること。
- 破釜沈船(はふちんせん):決死の覚悟で戦うことのたとえ。(由来は項羽)
- 一か八か(いちかばちか):結果はどうなろうと、運を天に任せてやってみること。
「背水の陣」の対義語
- 安全策(あんぜんさく): 危険を避け、安全を第一に考えたやり方。
- 余裕綽々(よゆうしゃくしゃく):ゆとりがあり、焦っていない様子。
- 高みの見物(たかみのけんぶつ):自分には関係ないとして、傍観していること。
使用上の注意点
「背水の陣」は非常に強い覚悟を示す言葉なので、日常会話で頻繁に使うと大げさに聞こえることがあります。
本当に切羽詰まった状況や、重要な場面での使用が適切です。
「背水の陣」の英語表現
with one’s back to the wall
直訳すると「壁を背にしている」となり、「追い詰められた状況」を意味します。
例文:
The team fought with their backs to the wall and won the championship.
(チームは背水の陣で戦い、優勝した。)
fight to the last ditch
「最後の溝まで戦う」で、最後まで必死に抵抗することを表します。
例文:
He is determined to fight to the last ditch to protect his rights.
(彼は自分の権利を守るために、最後まで戦う決意だ。)
burn one’s bridges/boats
「自分の橋/船を燃やす」で、後戻りできない状況を作ることを意味します。
例文:
She burned her bridges when she quit her job without having another one lined up.
(彼女は次の仕事を見つけないまま仕事を辞め、背水の陣を敷いた。)
まとめ
「背水の陣」は、退路を断ち、決死の覚悟で物事に当たることを意味する言葉です。
由来は中国の故事であり、ビジネスやスポーツなど、様々な場面で使われます。
類義語や対義語、英語表現も覚えておくことで、表現の幅が広がります。
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