「国士無双」の意味・語源・由来
意味
国士無双とは、国の中で並ぶ者がいないほど、すぐれた人物のことです。
比類ない才能や能力を持つ人を指して使われます。「国士」は国の中で特に優れた人物を意味し、「無双」は二つとない、並ぶものがないという意味です。
語源・由来:
中国の『史記』「淮陰侯列伝」にある故事に由来します。
漢の初代皇帝である劉邦に仕えた武将・韓信は、当初は項羽の下にいましたが、後に劉邦の配下となりました。
劉邦の重臣である蕭何は、韓信の才能を高く評価し、劉邦に「諸将は得やすくも、信の如きは、国士無双なり(並の将軍ならすぐに見つかりますが、韓信ほどの人物は国に二人といない傑物です)」と進言しました。
この言葉から、「国士無双」という言葉が生まれました。
「国士無双」の使い方(例文)
- 彼は野球界において、国士無双の才能を持つと言われている。
- 彼女は、その美貌と知性を兼ね備え、まさに国士無双の女性だ。
- 国士無双の音楽家として、彼は世界中で称賛されている。
- その画家の描く絵は、国士無双の才能を感じさせる。
- 若き日の彼は国士無双と謳われた剣豪だった。
注意! 間違った使い方
- この商品は、国士無双の安さです!(誤用)
※「国士無双」は人に使う言葉です。
物や値段に対して使うのは適切ではありません。
「国士無双」の文学作品などの用例
楚漢戦争とも呼ばれる項羽と劉邦二人の争いは、国士無双、背水の陣、四面楚歌など多くの故事を生み出したことでも知られています。
司馬遼太郎の小説『項羽と劉邦』では、蕭何が韓信を評して「国士無双」と言う場面が描かれています。以下はその一部の引用です。
「—国士無双でござる」と、いった。
「たれでござる」と、劉邦がきいた。
「韓信でござる」
「国士無双」の類義語
- 天下無双(てんかむそう):世の中に並ぶ者がいないほど優れていること。
- 唯一無二(ゆいいつむに):ただ一つで、他にないこと。
- 絶世(ぜっせい):世に並ぶものがないほど優れていること。
- 無比(むひ):比べるものがないこと。
- 当代随一(とうだいずいいち): その時代で一番優れていること。
「国士無双」の対義語
- 凡庸(ぼんよう):平凡で取り立てて言うほどの特徴がないこと。
- 凡才(ぼんさい):平凡な才能、または才能のないこと。
- 月並み(つきなみ):平凡で、ありふれていること。
使用上の注意点
非常に高い評価を表す言葉なので、本当に傑出した人物に対してのみ使うようにしましょう。
軽々しく使うと、言葉の重みが失われてしまいます。
「国士無双」の英語表現
an unparalleled talent in the country
「国で比類なき才能」という意味。
例文:
He is an unparalleled talent in the country.
(彼は国士無双の才能の持ち主だ。)
a peerless figure in the nation
「国で並ぶ者のない人物」という意味。
例文:
She was recognized as a peerless figure in the nation.
(彼女は国士無双の人物として認められた。)
one of a kind
唯一無二の存在。
例文:
As a programmer, he’s one of a kind.
(プログラマーとして、彼は国士無双の存在だ。)
麻雀の役「国士無双」について

一方、麻雀の世界にも「国士無双」という言葉が登場します。
麻雀における「国士無双」とは、役満と呼ばれる非常に高い点数を持つ役の一つです。
麻雀の役「国士無双」の名前の由来
麻雀の役「国士無双」の名前は、上記の故事成語「国士無双」に由来します。
この役が、非常に珍しい牌の組み合わせで成立し、並ぶものがないほど優れた役であることから、この名前が付けられました。
由来に関する考察
- 希少性: 13種類の么九牌(ヤオチューハイ)をすべて集める必要があるため、成立が非常に困難です。
この希少性が、「国に二人といない」という言葉のイメージと合致します。 - 役の強さ: 役満という最高位の役であり、その強さが「並ぶものがない」という無双のイメージを想起させます。
- 美しさ: 13種類の異なる牌が並ぶ姿は、視覚的にも美しく、特別な役であることを印象付けます。
- 十三面待ちの特異性: 特に、国士無双十三面待ちは、13種類すべての么九牌で待つことができるという、他の役にはない特徴を持っています。これもまた、比類ない存在である「国士無双」の名にふさわしいと言えるでしょう。
これらの要素が組み合わさり、麻雀の役「国士無双」は、その名の通り、特別な存在感を放っています。
余談
余談ですが、麻雀漫画『アカギ 〜闇に降り立った天才〜』では、主人公の赤木しげるが、この国士無双を得意役としています。
ストーリの要所要所で、見事な国士無双を披露し読者を熱狂させました。
まとめ
「国士無双」は、本来、国に二人といないほど優れた人物を指す言葉です。
中国の故事に由来し、類まれな才能や能力を持つ人を称賛する際に使われます。
非常に高い評価を表す言葉なので、本当に傑出した人物に対してのみ使うようにしましょう。
また、麻雀においては役満の一つであり、その成立の難しさと役の強さから、「国士無双」の名が冠されています。
麻雀でもその名の通り、特別な役として扱われます。
コメント