「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の意味・語源・由来
意味
大きな成果を得るためには、相応の危険を冒す必要があるという教え。
虎の子を得るためには、危険な虎の巣穴に入らなければならない、という意味から来ています。
成功や貴重なものを手に入れるには、リスクを避けてばかりいられないことを示します。ビジネスや人生の決断時に「安全策だけでは限界がある」と自覚を促す表現として用いられます。
語源・由来
中国『後漢書』の班超伝が起源。
紀元1世紀、西域で敵に包囲された班超が部下に「虎の巣に入らなければ虎の子を捕まえられない」と決死の覚悟を説いた故事から。日本では室町時代の文献『文明本節用集』に記載され、武士の精神形成に影響を与えました。江戸時代に一般庶民にも広まり、現在の形に定着したとされます。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の使い方(例文)
- 新規事業立ち上げで「虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。思い切って投資しよう」
- 留学を迷う友人に「語学力向上には現地生活が近道。まさに虎穴に入らずんば…だよ」
- 手術のリスクを承知で「先生、やります。虎穴に入らずんば虎子を得ずです」
注意! 間違った使い方
単に無謀な行動をすることを指して「虎穴に入らずんば虎子を得ず」を使うのは誤用です。
あくまで、大きな成果を得るためにはリスクを負う必要がある、という意味で使われます。
十分な準備や計画なしに、ただ危険なことに飛び込むことを推奨する言葉ではありません。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の文学作品などの用例
「虎穴に入らずんば虎児を得ずじゃ。 ――わしは敢てやる」
(吉川英治「三国志」)
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の類義語
- 危ない橋を渡る(あぶないはしをわたる):
危険な手段や方法を用いること。 - 火中の栗を拾う(かちゅうのくりをひろう):
自分の利益にならないのに、他人のために危険を冒すこと。 - 一か八か(いちかばちか):
結果はどうなるかわからないが、運を天に任せて思い切ってやってみること。 - 蒔かぬ種は生えぬ(まかぬたねははえぬ):
原因がなければ結果も生じない。何かをしなければ何も得られない、という意味で、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と共通のニュアンスを持ちます。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の対義語
- 石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる):
非常に用心深く、安全を確認して行動すること。 - 転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ):
失敗しないように、前もって用心すること。 - 君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず):
賢明な人は危険な場所に近づかない。 - 触らぬ神に祟りなし(さわらぬかみにたたりなし):
ある物事に関係さえしなければ、害を受けることはないというたとえ。面倒なことには関わらない方が良い、という意味です。
使用上の注意点
このことわざは、リスクを冒してでも挑戦することの重要性を示していますが、無謀な行動を推奨するものではありません。
リスクとリターンを十分に検討し、計画的に行動することが重要です。
また、文脈によっては、相手に無謀な行動を促すように聞こえる可能性もあるため、注意が必要です。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の英語表現
Nothing ventured, nothing gained.
意味:何も冒険しなければ、何も得られない。
※日本語のことわざとほぼ同じ意味合いを持ちます。
例文:
I know it’s risky, but nothing ventured, nothing gained.
(リスクがあるのはわかっているけど、虎穴に入らずんば虎子を得ず、だよ。)
No pain, no gain.
直訳:苦労なくして、利益なし。
意味:努力や犠牲なしに成果は得られない。
例文: I know studying is hard, but no pain, no gain.
(勉強が大変なのはわかるけど、苦労なくして利益なし、だよ。)
You cannot make an omelet without breaking eggs.
直訳:卵を割らずにオムレツは作れない。
意味:何かを成し遂げるためには、犠牲やリスクが伴う。
例文:
Starting a new business is risky, but you can’t make an omelet without breaking eggs.
(新しいビジネスを始めるのはリスクがあるけど、卵を割らずにオムレツは作れないよ。)
まとめ
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」は、価値あるものを手に入れるには危険を冒す必要があるという教えです。
中国の『後漢書』に由来し、大きな成果を得るためには、あえてリスクに立ち向かう勇気が必要だと説いています。
このことわざは、現代社会の起業、転職、研究開発など多くの場面で通じます。
ただし、単に無謀に危険に飛び込むのではなく、計画性を持った挑戦とリスク管理のバランスが成功への鍵となります。
自分の目標に向かって一歩踏み出す勇気が必要なとき、このことわざを思い出してみましょう。
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