意味・教訓
「大山鳴動して鼠一匹」とは、大きな山が音を立てて揺れ動くほどの大騒ぎをしたにもかかわらず、結果として出てきたのは鼠が一匹だけだった、という意味のことわざです。
転じて、前触れや騒ぎばかりが大きくて、実際の結果が非常に小さいことのたとえとして使われます。
期待外れ、肩透かし、といったニュアンスを含んでいます。
語源・由来
このことわざは、古代ローマの詩人ホラティウスの『詩論(Ars Poetica)』に登場する一節
“Parturient montes, nascetur ridiculus mus.”
(山々が産気づいて、滑稽な鼠が一匹生まれるだろう)に由来するとされています。
これがラテン語の格言として広まり、ヨーロッパ諸語に翻訳され、日本にも伝わりました。
直接的には、江戸時代中期の漢詩人・服部南郭(はっとり なんかく)が、このラテン語の成句を「大山鳴動 鼠一匹」と訳したことが、日本語としての初出とされています。
使用される場面と例文
「大山鳴動して鼠一匹」は、騒ぎや期待が大きい割に、結果が小さい、つまらない、といった状況を表す際に使われます。
ビジネス、政治、日常生活など、幅広い場面で用いられます。
例文
- 「新製品の発表会は派手だったが、中身は既存製品の改良版に過ぎなかった。大山鳴動して鼠一匹とはこのことだ。」
- 「国会での大論争の末、可決された法案は、ほとんど影響力のないものだった。大山鳴動して鼠一匹の典型例だ。」
- 「あれだけ大騒ぎして準備したイベントだったのに、来場者はたったの3人…。大山鳴動して鼠一匹だったね。」
- 「長時間に及ぶ会議の末、決定されたのは些細なことだった。大山鳴動して鼠一匹という結果に終わった。」
文学作品等での使用例
「なにしろ莫大な費用を使ったんだ。すくなくとも世界記録を出してもらわにゃ困る」
「そうすると、きみ、大山鳴動して鼠一匹ということになるな」星新一『ボッコちゃん』より「おーい でてこーい」
この会話では、莫大な費用をかけたにも関わらず、世界記録が出なければ、騒ぎだけが大きく結果が小さい、つまり「大山鳴動して鼠一匹」になってしまう、という状況を示しています。
類義語
- 蛇が出そうで蚊も出ぬ(じゃがでそうでかもでぬ):大騒ぎした割には、大した結果が出ないことのたとえ。
- 空騒ぎ:騒ぐだけで、実際には何もないこと。
- 張り子の虎:見かけは立派だが、中身が伴わないもの。
- 羊頭狗肉(ようとうくにく):見かけは立派だが、実質が伴わないこと。羊の頭を看板に掲げて、実際には犬の肉を売るという意味から。
関連語
- 誇大広告(こだいこうこく):実際よりも大げさに宣伝すること。
対義語
- 微言大義(びげんたいぎ):簡潔な言葉の中に、深い意味が含まれていること。
(「大山鳴動して鼠一匹」は、大げさな表現のわりに内容が乏しいことを指すのに対し、「微言大義」は、短い言葉の中に深い意味が込められていることを指すため、対義語と解釈できます。)
英語表現(類似の表現)
- Much ado about nothing.
直訳:何もないことについての大騒ぎ。
意味:大騒ぎしたのに、中身がないこと。 - The mountain labored and brought forth a mouse.
直訳:山が産気づいて鼠を産んだ。
意味:「大山鳴動して鼠一匹」の直訳に近い表現。 - A storm in a teacup.
直訳:ティーカップの中の嵐。
意味:内輪のつまらない騒ぎ。
使用上の注意点
「大山鳴動して鼠一匹」は、批判的なニュアンスを含むため、使う相手や状況には注意が必要です。
目上の人や、努力した人を直接批判する場合には、使用を避けた方が良いでしょう。
また、自虐的に使う場合でも、言い訳がましく聞こえることがあるので、注意が必要です。
まとめ
「大山鳴動して鼠一匹」は、大きな騒ぎや期待に反して、結果が非常に小さいことを表すことわざです。
古代ローマの詩に由来し、日本では江戸時代から使われています。
ビジネスや政治など、さまざまな場面で、期待外れや肩透かしを表す際に用いられます。
批判的な意味合いを持つため、使用する際には注意が必要です。
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