掃き溜めに鶴

ことわざ
掃き溜めに鶴(はきだめにつる )

8文字の言葉は・ば・ぱ」から始まる言葉
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掃き溜めに鶴 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

意味・教訓 – 不釣り合いなほど優れた存在

「掃き溜めに鶴」とは、汚い場所や平凡な人々の中に、そこには不釣り合いなほど美しく優れたものや人物が現れることのたとえです。

「掃き溜め」はゴミを掃き集めた汚い場所を、「鶴」は姿が美しく気高い鳥を指します。
この両極端なものを対比させることで、周囲の環境とは際立って優れた存在であることを強調しています。
思わぬ場所に素晴らしい才能や美点が見出される驚きや、その価値の高さを表現する際に用いられます。

語源・由来 – 「掃き溜め」と「鶴」の対比

このことわざの明確な初出は定かではありませんが、江戸時代の文献などには既に用例が見られます。

「掃き溜め」という取るに足らない、汚れた場所の象徴と、「鶴」という清らかで高貴なものの象徴を組み合わせることで、「場違いなほど優れている」「周囲とは比べ物にならないほど立派である」という意味合いを強く打ち出しています。
このような強い対比によって、聞く人に鮮烈な印象を与える表現となっています。

使用される場面と例文 – 意外な場所での発見

「掃き溜めに鶴」は、周囲の状況や人々とは不釣り合いなほど、際立って優れた人や物を見つけた時に使われます。
才能ある新人、美しいもの、優れた品物などが、予期せぬ場所や平凡な集団の中に存在することを表現します。
時として、優れた配偶者を得た場合などに謙遜や自虐の意味を込めて使われることもあります。

例文

  • 田舎町の小さな劇団に、掃き溜めに鶴のような才能を持つ女優が現れた。
  • がらくたばかりの骨董市で、掃き溜めに鶴とも言える名画を見つけ出した。
  • 彼は平凡な社員ばかりの部署で、まさに掃き溜めに鶴の存在だ。
  • 「うちの息子には、掃き溜めに鶴のような、もったいないくらい良いお嫁さんが来てくれたよ」

類義語・関連語 – 似た状況を表す言葉

類義語

  • 鶏群の一鶴(けいぐんのいっかく):多くの凡人の中に、一人だけ際立って優れた人物がいることのたとえ。
    ※「掃き溜めに鶴」が場所と物の対比であるのに対し、「鶏群の一鶴」は凡人と優れた人物の対比に焦点が当てられています。
  • 泥中の蓮(でいちゅうのはす):汚れた環境の中にいても、それに染まらず清らかさを保っていることのたとえ。
    ※ 周囲との対比という点は共通しますが、「泥中の蓮」は環境に染まらない高潔さを強調します。
  • 珠玉(しゅぎょく):美しい玉。転じて、際立って優れたものや人のたとえ。

関連語

  • 場違い:その場の雰囲気や状況にふさわしくないこと。
  • 際立つ:周囲のものと比べて、ひときわ目立つこと。
  • 高嶺の花:見ているだけで、手に入れることのできないもののたとえ。憧れの対象。

対義語 – 環境に染まること、平凡さ

  • 類は友を呼ぶ:似た者同士は自然と集まるということ。
  • 朱に交われば赤くなる:人は付き合う相手や環境によって、良くも悪くもなるということ。
  • 平凡:特に優れた点もなく、ありふれていること。

英語での類似表現 – 輝く原石のように

英語にも、似たような状況を表す表現があります。

  • A diamond in the rough
    意味:磨けば光る原石。荒削りだが優れた素質を持っている人や物。埋もれている才能。
    ※「掃き溜めに鶴」とは少しニュアンスが異なりますが、本来の価値がまだ発揮されていない優れたものを指す点で共通項があります。
  • A pearl found on a dunghill
    意味:肥溜め(汚い場所)で見つかった真珠。日本語のことわざに近い直訳的な表現ですが、一般的ではありません。

使用上の注意点 – 褒め言葉?失礼な表現?

「掃き溜めに鶴」は、対象となる人や物を褒める意図で使われることが多いですが、注意が必要です。
なぜなら、その人や物が存在する場所や、周りにいる人々を「掃き溜め(価値のない、汚い場所・集団)」と見なすニュアンスが含まれるためです。

本人以外の第三者がいる場面で使うと、その場にいる他の人々を侮辱していると受け取られかねません。
また、直接本人に対して使う場合でも、状況によっては「あなたはこんな場所にいるべきではない」という見下したニュアンスに聞こえる可能性もあります。
特に、自分自身や自分の身内について謙遜の意味で使う場合も、過度な自虐は嫌味に聞こえることがあるため、相手や状況をよく考えて使うべき表現と言えるでしょう。

まとめ

「掃き溜めに鶴」は、平凡な環境や質素な集団の中に、ひときわ優れた人や物が存在することを表すことわざです。対比の強さによって、その価値が一層際立つ表現ですが、周囲を見下すニュアンスを含む場合があるため、使用には注意が必要です。

褒め言葉として使う際も、相手や状況に配慮し、不快な印象を与えないよう心がけましょう。
このことわざは、思いがけない場所にこそ素晴らしい価値が潜んでいることを示唆する、奥深い表現でもあります。

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