遠くの親類より近くの他人

ことわざ
遠くの親戚より近くの他人(とおくのしんせきよりちかくのたにん)
異形:遠くの親類より近くの他人

17文字の言葉と・ど」から始まる言葉
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意味・教訓

「遠くの親類より近くの他人」とは、遠方に住んでいる親類よりも、近隣に住んでいる他人の方が、いざという時に頼りになるという意味のことわざです。
遠方に住む親類は、何かあった時にすぐに駆けつけることができませんが、近所の人は、日常的に助け合うことができます。
このことわざは、物理的な距離の近さだけでなく、心理的な距離の近さ、関係性の深さを表すこともあります。
また、必ずしも親類より他人を優先すべきという意味ではなく、それぞれの関係性の特性を理解し、うまく付き合っていくことの大切さを示唆しています。

語源・由来

このことわざの正確な由来は特定されていません。
しかし、古くから日本で使われてきたことわざであり、人々の生活経験から生まれた言葉と考えられます。
昔は、交通手段や通信手段が発達していなかったため、遠くの親類とは疎遠になりがちでした。
一方、近所の人々とは、日常的に助け合い、協力し合う関係(相互扶助)が築かれていました。
そのような生活環境の中で、「遠くの親類より近くの他人」という考え方が生まれたのでしょう。

使用される場面と例文

「遠くの親類より近くの他人」は、主に以下のような場面で使われます。

  • 近所付き合いの重要性を説く時
  • 遠方の親類よりも、身近な人を大切にするよう促す時
  • 人間関係のあり方について、教訓を述べる時

例文

  • 「隣の奥さんには、いつも助けてもらっている。本当に、遠くの親類より近くの他人、だね。」
  • 「何かあった時に頼りになるのは、やっぱり近所の人たちだ。遠くの親類より近くの他人、というからね。」
  • 「田舎に住む親類とは、年に一度会うかどうかだ。それよりも、毎日のように顔を合わせるご近所さんの方が、親しい存在だよ。遠くの親類より近くの他人、だね。」
  • 「災害時には、遠くの親類より近くの他人、近所の人との助け合いが大切だということを実感した。」
  • 「最近は、近所付き合いが希薄になっているけど、遠くの親類より近くの他人、という言葉を忘れないようにしたい。」

文学作品での使用例

「併し又遠くの親戚より近くの他人と云う譬もあるから、そう極まってもいない。」

夏目漱石『道草』

健三はお島との関係を説明する中で、近所にいるお島の方が、血縁関係はなくても精神的に近い他人であることを述べています。

類義語

  • 遠い一家より近い隣(とおい いっかより ちかい となり):「遠くの親類より近くの他人」とほぼ同じ意味。
    「一家」は、親戚や家族を指します。
  • 隣は選ばれぬ:隣人は、自分で選ぶことができない。だからこそ、良好な関係を築くことが大切であるという意味。
  • 向こう三軒両隣(むこうさんげんりょうどなり):自分の家の向かい側三軒と、両隣の家。近所付き合いの範囲を示す言葉。
  • 袖振り合うも多生の縁:道ですれ違う人と袖が触れ合うようなちょっとしたことも、前世からの因縁によるものだというたとえ。

関連語

関連する概念・心理

  • 互助(ごじょ):互いに助け合うこと。
  • 近隣関係:近所の人々との関係。
  • 地域コミュニティ:一定の地域に住む人々が形成する共同体。

対義語

「遠くの親類より近くの他人」の対義語は、血縁関係の重要性を示す言葉です。

  • 血は水よりも濃い:血縁関係は、他人との関係よりも強い絆で結ばれているという意味。

使用上の注意点

「遠くの親類より近くの他人」は、親類を軽視する言葉ではありません。
あくまでも、いざという時に頼りになるのは、身近な人々であるということを示しています。
親類との関係も大切にしつつ、近所の人々とも良好な関係を築くことが理想的です。
また、このことわざを盾に、他人への依存心を強くすることは避けるべきです。

英語表現(類似の表現)

A near neighbor is better than a distant relative.

直訳:近い隣人は、遠い親類よりも良い。
意味:「遠くの親類より近くの他人」とほぼ同じ意味。

例文:
When I was sick, my neighbor helped me a lot. A near neighbor is better than a distant relative.
(私が病気の時、隣の人がとても助けてくれた。
遠くの親類より近くの他人、だね。)

A friend in need is a friend indeed.

直訳:まさかの友は真の友。
意味:困っている時に助けてくれる人が、本当の友達である。
例文:
He came all the way to my house to fix my car. A friend in need is a friend indeed.
(彼はわざわざ家まで来て、私の車を修理してくれたんだ。まさかの友は真の友だね。)

まとめ

「遠くの親類より近くの他人」ということわざは、遠くにいる親類よりも、身近にいる他人の方が、いざという時に頼りになることを意味しています。
これは、人々の生活の中から生まれた言葉であり、近所付き合いの大切さを示しています。

大切なのは、このことわざを人間関係の優劣を決めるものとして捉えるのではなく、それぞれの関係の特性を理解する指針とすることです。
親類との絆を大切にしつつ、身近な人とも良好な関係を築き、互いに助け合える社会を作っていきましょう。

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