意味 – 黙って行うことの大切さ
「不言実行」とは、目標や計画についてあれこれと口にする前に、黙ってなすべきことを実際に行動に移す、という意味の四字熟語です。
言葉で語るだけでなく、行動で示すことの価値や、その実直な姿勢を肯定的に表す言葉として用いられます。
語源 – 「言わず」に「行う」
この言葉は、「不言」と「実行」という二つの語から成り立っています。
- 不言(ふげん):口に出して言わないこと、黙っていること。
- 実行(じっこう):実際に行うこと。
つまり、「言わずに、行う」というのが、この言葉の基本的な成り立ちです。
特別な古いお話や出来事が元になっているわけではありません。
ですが、昔から日本では、「口で立派なことを言うだけでなく、黙って行動で示すこと」が、とても大切なこと、素晴らしいこと(美徳)だと考えられてきました。
言葉だけでなく、実際の行動が伴ってこそ、周りの人から信頼されたり、本当に物事を成し遂げたりできる、という考え方が根底にあるのですね。
そうした考え方から、「あれこれ言う前に、まずは行動で示そう」という、誠実で実直な姿勢を表す言葉として、「不言実行」が使われるようになりました。
使われる場面と例文 – 行動で示す姿勢
「不言実行」は、人の実直な行動や確固たる意志を評価する際や、自らの決意を示す場面などで使われます。また、口ばかりで行動が伴わないことへの対比として用いられることもあります。
例文
- 「彼はいつも不言実行で、黙々と難しい課題を成し遂げる人だ。」
- 「口で立派なことを言うのは簡単ですが、不言実行を貫くのは本当に難しいことです。」
- 「リーダーに必要な資質の一つは、不言実行の精神だと私は考えています。」
- 「彼女は不言実行タイプで、あまり自分の努力や苦労を表に出さない。」
類義語・関連語 – 行動を重んじる言葉
- 率先垂範(そっせんすいはん):人の先に立って自ら行動し、模範を示すこと。「不言実行」と同様に、行動によって示す姿勢を表します。
- 有言実行(ゆうげんじっこう):言ったことは必ず実行すること。「不言実行」とは対照的に、まず言葉で目標を宣言しますが、目標達成に向けて行動するという点では共通の強さを持っています。
- 以身作則(いしんさくそく):自分自身の行いをもって、他の人の手本となること。これも行動の重要性を示す言葉です。
対義語 – 言葉だけで行動が伴わないこと
- 有言不実行(ゆうげんふじっこう):口では言うものの、実際には行動しないこと。「不言実行」とは正反対の状態です。
- 口先だけ(くちさきだけ):言葉では威勢の良いことや立派なことを言うけれども、実際の行動が伴わないさま。
- 言うは易く行うは難し(いうはやすくおこなうはかたし):口で言うのは簡単だけれども、それを実際に実行するのは難しい、という意味のことわざ。行動の難しさを表します。
英語での類似表現 – 行動は言葉よりも雄弁
黙って行動することの価値を示す英語表現には、以下のようなものがあります。
- Actions speak louder than words.
意味:行動は言葉よりも雄弁である。まさに「不言実行」の精神を表す、有名なことわざです。 - Walk the talk.
意味:(話すことと歩くことを一致させる、ということから)言行を一致させる。有言実行にも近いですが、言葉だけでなく行動が伴うことの重要性を示します。 - Practice what you preach.
意味:自分が説いていること(言うこと)を実行しなさい。これも言行一致を促す表現です。
使用上の注意点 – コミュニケーションとのバランス
「不言実行」は、多くの場合、目標達成への強い意志や実直さを示す美徳として、肯定的に捉えられます。
しかしながら、状況によっては注意も必要です。
周りに何も伝えずに行動することで、意図が伝わらず誤解されたり、協力が得られにくくなったりすることもあります。また、独断専行と受け取られてしまう可能性も考えられます。
目標達成のためには、黙々と努力することも大切ですが、時には周囲とコミュニケーションを取り、目的や進捗を共有することも、円滑な進行のためには重要になるでしょう。
まとめ
「不言実行」は、あれこれ言う前に、黙ってやるべきことを実行するという、実直で強い意志を表す四字熟語です。
言葉よりも行動で示すことの価値を伝え、日本でも古くから美徳の一つとされてきました。
多くの場面で肯定的に評価される姿勢ですが、時と場合によっては、周囲とのコミュニケーション不足を招く可能性も心に留めておくとよいでしょう。
行動することの素晴らしさと、言葉で伝えることの大切さ、その両方のバランスを考えながら、この言葉が示す精神を大切にしていきたいものですね。
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