「騎虎の勢い」の意味・語源・由来
意味
非常に勢いが盛んで、途中でやめることも退くこともできない状態のたとえです。
猛々しい虎にまたがった者は、途中で降りれば虎に食い殺されてしまうため、最後まで乗り続けなければなりません。
このことから、始めた以上は、最後までやり遂げなければならない状況、また、そのような激しい勢いを表します。
語源・由来:
中国の歴史書『北史(ほくし)』や『隋書(ずいしょ)』にある故事に由来します。
南北朝時代、北周の大臣であった独孤信(どっこしん)は、非常に厳格な人物でした。
ある時、同僚が独孤信を批判する意見を述べたところ、別の同僚がそれを制止し、「今、彼を失脚させようとすれば、騎虎の勢いで、途中でやめることはできないぞ」と言ったというエピソードがあります。
ここでの「騎虎の勢い」は、一度始めたら容易には後戻りできない状況、そして、その行動に伴う危険性を意味しています。
「騎虎の勢い」の使い方(例文)
- 「新規事業は、すでに多額の投資をしており、今さら後戻りできない。まさに騎虎の勢いだ。」
- 「反対意見もあったが、一度始めてしまった以上、騎虎の勢いで突き進むしかない。」
- 「彼は、怒りにまかせて上司に食ってかかったが、もはや騎虎の勢いで、引くに引けない状況になってしまった。」
- 「選挙戦は、序盤から激しい舌戦となり、両陣営とも騎虎の勢いで、一歩も譲らない構えだ。」
- 「一度、その計画に賛成してしまったので、いまさら反対も出来ず、友人は騎虎の勢いで準備を進めている。」
注意! 間違った使い方
- 「彼は、新しいプロジェクトのリーダーに抜擢され、騎虎の勢いで喜んでいる。」
※「騎虎の勢い」は、単なる喜びや勢いがある状況を表す言葉ではありません。上記は、単に勢いづいている様子を表したいのであれば、「意気揚々としている」などの表現が適切です。
「騎虎の勢い」の文学作品などの用例
司馬遼太郎の歴史小説『項羽と劉邦』で、以下のように使われています。
「今、我軍は、騎虎の勢いにある。降(くだ)るか、戦うか、二つに一つしかない」
「騎虎の勢い」の類義語
- 進退窮まる(しんたいきわまる):進むことも退くこともできなくなること。
- 抜き差しならない:事態が深刻で、どうにもならない状態。
- 後には引けない:始めた以上は、途中でやめられない状況。
- 背水の陣(はいすいのじん):一歩も退けない絶体絶命の状況で、全力を尽くすこと。
「騎虎の勢い」の対義語
- 勇気ある撤退:損害や被害が大きくならないうちに、思い切って退却すること。
- 見切り千両:損失を覚悟で、早めに手を引くことが大切であるという事。
使用上の注意点
「騎虎の勢い」は、単に勢いがあるだけでなく、「途中でやめられない」「後戻りできない」というニュアンスを含みます。
そのため、使用する際には、その状況が本当に途中でやめることができないのか、よく検討する必要があります。
また、ネガティブな状況で使われることが多い言葉です。
「騎虎の勢い」の英語表現
Have a tiger by the tail.
直訳:虎の尻尾を掴んでいる
意味:騎虎の勢い(非常に危険な状況、後戻りできない状況)
例文:
We’ve invested so much in this project that we have a tiger by the tail. We can’t stop now.
(このプロジェクトには多額の投資をしてしまったので、騎虎の勢いだ。もう止めることはできない。)
Ride the tiger.
直訳:虎に乗る
意味:騎虎の勢い(非常に危険な状況だが、進み続けるしかない)
例文:
Once you start down that path, you’re riding the tiger. There’s no turning back.
(一度その道を歩み始めたら、騎虎の勢いだ。もう後戻りはできない。)
まとめ
「騎虎の勢い」は、非常に勢いが盛んで、途中でやめることも退くこともできない状況を表すことわざです。
虎にまたがった者が、途中で降りることができない様子から生まれました。
ビジネスや政治など、様々な場面で使われますが、ネガティブな状況で使われることが多い点、そして「後戻りできない」というニュアンスを理解した上で、使用する必要があります。
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