意味
「内弁慶の外地蔵」とは、家の中(内)では威張り散らしている(弁慶)が、家の外(外)ではおとなしく、まるで地蔵のように静かで、臆病だったり、自分の意見を言えなかったりする人のことを指すことわざです。
内弁慶とは、家の中だけで強がる人のこと。
外地蔵は、道端に置かれた地蔵菩薩のように、外では静かで目立たない様子を表します。
家庭内と外での態度のギャップが大きい人を、揶揄したり、批判したりする際に使われます。
語源・由来
「内弁慶」の「弁慶」は、平安時代末期の武将、武蔵坊弁慶に由来します。
弁慶は、怪力で知られ、主君の源義経に忠義を尽くした人物です。
しかし、このことわざでは、弁慶の強さを、家の中だけで発揮される「内向きの強さ」として、皮肉的に使っています。
「外地蔵」の「地蔵」は、道端や寺院などによく置かれている地蔵菩薩のことです。
地蔵菩薩は、子供を守り、人々を救済する慈悲深い仏様ですが、ここでは、その静かで動かない姿が、外での臆病さや無口さを表す比喩として用いられています。
この2つの言葉が組み合わさって、「内弁慶の外地蔵」ということわざが生まれました。
江戸時代にはすでに使われていたようです。
使用上の注意点
このことわざは、相手を揶揄するニュアンスが強いため、面と向かって使うのは避けた方が良いでしょう。
使う場合でも、親しい間柄で、冗談として使う程度にとどめるのが無難です。
使用される場面と例文
「内弁慶の外地蔵」は、家庭内と外での態度が大きく異なる人を、非難したり、からかったりする際に使われます。
子供や若者に対して使われることが多いですが、大人に対しても使うことができます。
例:
「学校や職場では目立たないが、家では家族に偉そうな態度をとる」
「SNSでは強気な発言をするが、現実では何も言えない」
例文
- 彼は、「内弁慶の外地蔵」で、家では威張っているのに、外では何も言えない。
- 妹は、典型的な「内弁慶の外地蔵」タイプだ。
- 「内弁慶の外地蔵」にならないように、外でも自分の意見を言えるようにしよう。
- 職場では静かな彼だが、家では「内弁慶の外地蔵」らしい。
類義語
- 家の中でのみ威張る:
- 内弁慶(うちべんけい):家の中でばかり威張って、外では意気地のないこと。また、そういう人。
- 内大名(うちだいみょう):家の中では大名のように威張るが、外ではそうでもないこと。
- 陰で威勢のいいことを言う:
- 陰弁慶(かげべんけい):直接本人には言わず、陰で威勢のよいことを言うこと。
- 鴨の脛を鶴にあてる(かものすねをつるにあてる): 外見は立派だが、内実は伴わないことのたとえ。
(少し文脈は異なりますが、内と外のギャップを表す言葉として)
関連する心理学の概念
- 自己呈示:
他人に与える印象をコントロールしようとすることです。「内弁慶の外地蔵」の人は、家の中と外で、異なる自己呈示を行っていると言えます。 - 社会的臆病 (Social Phobia / Social Anxiety Disorder):
他者からの否定的な評価を恐れ、社会的な状況を避ける傾向。「内弁慶の外地蔵」の人は、外での自己主張を恐れている可能性があります。 - 二面性:
人は誰しも、状況や相手によって異なる側面を見せることがあります。「内弁慶の外地蔵」は、この二面性が極端な形で表れていると言えるでしょう。
対義語
明確な対義語はありませんが、強いて言うなら、以下のような表現が対照的です。
- どこでも誰に対しても態度が変わらない人
- 裏表のない人
- 公明正大な人
英語表現(類似の表現)
- A lion at home and a mouse abroad.
直訳:家ではライオン、外ではネズミ。 - A bully at home, a coward outside.
直訳:家ではいじめっ子、外では臆病者。
まとめ
「内弁慶の外地蔵」は、家の中と外での態度のギャップが大きい人を指すことわざです。
この言葉は、私たちに、どこでも同じ態度でいること、自分の意見をはっきりと言うことの大切さを教えてくれます。
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