意味
「善は急げ」とは、良いと思ったことは、ためらわずにすぐ実行に移すべきだという教えです。
良い行いは、時間が経つにつれて状況が変化したり、気持ちが揺らいだりして、実行が難しくなる可能性があるため、早めに行動することが大切だという意味が込められています。
語源・由来
「善は急げ」の正確な初出は不明です。
しかし、古くから仏教の教えや中国の古典など、さまざまな文献で似たような意味の言葉が使われてきたことから、人々の経験則に基づいた普遍的な教訓として、長い年月をかけて広まったと考えられています。
特定のだれかが言った言葉、というよりは、多くの人々に共有されてきた、ことわざです。
例えば、仏教には「諸行無常(しょぎょうむじょう)」という言葉があり、すべてのものは常に変化し、同じ状態にとどまることはない、という教えがあります。
この教えは、「善は急げ」の背景にある、状況や気持ちは時間とともに変化するという考え方と共通しています。
使用される場面と例文
「善は急げ」は、良い行いを迅速に行うことを促す場面で、老若男女問わず日常的に使われます。
例文
- 「善は急げ」というから、ボランティア活動への参加をすぐに決めた。
- 今の仕事に不満があるなら、ダラダラ続けるより「善は急げ」で転職活動を始めたほうがいいよ。
- 彼に気持ちを伝えたいなら、迷っている時間がもったいない。「善は急げ」で思い切って告白しよう!
- 限定販売のスニーカーが出るらしい。「善は急げ」、発売日にはすぐに買いに行こう!
- 助けてもらったお礼は、後回しにせずすぐに伝えるべきだ。「善は急げ」で今すぐ連絡しよう!
注意点
「善は急げ」は、基本的には「良いこと」に対して使う言葉です。「悪いこと」を急かす場合には、通常は使用しません。
「悪事は急げ」とは言わないので注意が必要です。
類義語
- 思い立ったが吉日:何かをしようと思い立ったら、その日を吉日と思ってすぐに始めるのが良いということ。
- 鉄は熱いうちに打て:好機を逃さず、熱意をもって取り組むべきだということ。
- 先んずれば人を制す:他人より先に行動を起こせば、有利な立場に立てること。
- 機先を制す(きせんをせいす):先手を取って、相手を抑えること。
- 即断即決(そくだんそっけつ):その場ですぐに判断し、決断すること。
- 迅速果断(じんそくかだん):素早く決断し、思い切って実行すること。
関連する心理学の概念
- 初頭効果:
人は最初に与えられた情報に強く影響を受けるという心理現象。
「善は急げ」を実践し、すぐに行動を起こせば、相手に良い印象を与えやすくなるかもしれません。 - ツァイガルニク効果:
人は達成できなかった事柄や中断された事柄を、達成できた事柄よりもよく覚えているという現象。
「善は急げ」を実践し、すぐに行動を起こせば、未完了のタスクとして記憶に残りやすく、行動の継続につながる可能性があります。
対義語
- 急いては事を仕損じる:焦って行うと、かえって失敗するということ。
- 石橋を叩いて渡る:非常に用心深く、安全を確認してから行動すること。
- 念には念を入れよ:注意した上にも、さらに注意深く行うこと。
- 遅疑逡巡(ちぎしゅんじゅん):疑い迷って、ぐずぐずとためらうこと。
- 優柔不断:ぐずぐずしていて、決断力に乏しいこと。
- 急がば回れ:危険な近道よりも、遠回りでも安全確実な道を選ぶべき。
英語表現(類似の表現)
- There is no time like the present.
意味:今ほど良い時はない。(思い立ったらすぐやるべきだ、という意味。) - Strike while the iron is hot.
意味:鉄は熱いうちに打て。
(好機を逃さずに行動すべきだという意味で、「善は急げ」に最も近い英語表現です。) - Make hay while the sun shines.
意味:太陽が照っているうちに干し草を作れ。
(好機を逃さずに利用すべきだという意味です。) - He who hesitates is lost.
意味:ためらう者は失う。
(決断の遅れが機会損失につながることを示唆しています。)
まとめ
「善は急げ」は、良いと思ったことをすぐに行動に移すことの大切さを説くことわざです。
タイミングを逃さず、迅速に行動することで、より良い結果を得られる可能性が高まります。
とはいえ、何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」。
状況をよく見極め、時には慎重さも忘れずに、「善は急げ」を実践していきたいものです。
このことわざは、単に行動の速さを推奨するだけでなく、好機を逃さないこと、そして「善い」と思った時の心の勢いを大切にすることを教えてくれます。
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