「自暴自棄」とは? – 意味と心理
「自暴自棄」とは、失望や失敗などが原因で、自分で自分の身を粗末に扱い、将来を考えずに投げやりな行動をとってしまう状態を指す四字熟語です。
「どうにでもなれ」という気持ちから、努力を放棄したり、不健全な行動に走ったりすることを意味します。
うまくいかない状況に陥ったとき、希望を失い、自分自身を見捨ててしまうような、切なく危険な心理状態を表しています。
「自暴自棄」の語源 – 孟子の教え
「自暴自棄」は、中国の戦国時代の思想家である孟子の言葉に由来します。
『孟子』の「離婁」篇に、その元となる記述があります。
- 自暴(じぼう):
孟子は「自ら暴(そこな)う者とは、ともに仁(じん:人間愛や思いやり)について語ることはできない」と言いました。
つまり、「自暴」とは、自分自身で仁の心を否定し、傷つけてしまうことを意味します。 - 自棄(じき):
続けて孟子は「自ら棄(す)つる者とは、ともに義(ぎ:人として行うべき正しい道)について語ることはできない」と言いました。
つまり、「自棄」とは、自分自身で義の道を踏み行うことを放棄してしまうことを意味します。
孟子は、仁や義といった人間としての徳性を自ら否定し、放棄してしまうことを「自暴」「自棄」と呼び、そのような人とは共に理想を語れないと説いたのです。
これが転じて、現代では「やけくそになる」「投げやりになる」という意味で使われるようになりました。
「自暴自棄」になる場面と例文
「自暴自棄」は、大きな挫折や深い失望感を味わった際など、精神的に追い詰められた状況で使われることが多い言葉です。
例文
- 「彼は試験に何度も落ち、自暴自棄になって勉強を完全にやめてしまった。」
- 「失恋のショックから自暴自棄になり、暴飲暴食を繰り返している。」
- 「自暴自棄な行動は、周りの人を心配させるだけだ。」
- 「どんなに辛くても、自暴自棄になるのだけは避けるべきだ。」
「自暴自棄」の類義語
「自暴自棄」と似たような、投げやりな状態を表す言葉です。
- やけくそ:「焼け糞」とも書きます。どうにでもなれという気持ちで、前後を考えずに行動すること。自暴自棄とほぼ同じ意味で使われます。
- 投げやり:物事をいい加減に行い、放っておくさま。責任感がない様子も含まれます。
- 捨て鉢:どうにでもなれと、投げやりになること。「やけくそ」と同義です。
- 破れかぶれ:物事がうまくいかず、どうにでもなれと開き直って無茶な行動をとること。
「自暴自棄」の対義語
「自暴自棄」とは反対に、困難に立ち向かったり、自分を律したりする意味を持つ言葉です。
- 自彊不息(じきょうふそく):自ら努め励んで、怠らないこと。
※ 困難にもめげず努力し続ける様子が、「自暴自棄」とは正反対です。 - 不撓不屈(ふとうふくつ):どんな困難にもくじけず、立ち向かうこと。
- 克己(こっき):自分の感情や欲望に打ち勝つこと。自制心を持つ様子。
- 前向き:物事を肯定的に考え、進んで取り組もうとするさま。
「自暴自棄」の英語での類似表現
英語で「自暴自棄」のニュアンスを伝える表現です。
- Desperation
意味:絶望、自暴自棄、やけくそ。追い詰められた精神状態を表します。 - Self-abandonment
意味:自己放棄。自分自身を見捨てる、投げやりになるという意味合いです。 - Giving in to despair
意味:絶望に屈する、絶望に身を任せる。
まとめ – 「自暴自棄」という言葉から考えること
「自暴自棄」という言葉は、人が困難に直面したとき、希望を失い、自分自身を大切にできなくなる心の脆さを示唆しています。
孟子の教えに由来するように、それは本来、人が持つべき大切な徳性(仁や義)を自ら手放してしまうことへの強い戒めでした。
現代でも、辛い出来事で投げやりな気持ちになることは誰にでもあるかもしれません。
しかし、この言葉が示すように、それは自らを傷つけ、未来を閉ざしかねない深刻な状態です。
だからこそ、誰かの苦しみに触れる際には、この言葉を軽々しく使わず、相手への配慮を忘れないようにしたいものです。
そして、もし自身が苦しい状況に陥っても、すぐに諦めてしまうのではなく、自分を労り、小さな希望でも見つけようと努める心の強さを持ち続けたいですね。
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