「木に縁りて魚を求む」の意味・語源・由来
意味
「木に縁りて魚を求む」とは、方法や手段が間違っているため、目的を達成することができないことのたとえです。
見当違いな方法で努力しても、望む結果は得られないという戒めを意味します。
木によじ登って魚を捕まえようとするようなもので、いくら努力しても無駄であることを示しています。
実現不可能なことを望む場合や、的外れな努力をしている人に対して使われます。
語源・由来
このことわざは、中国の古典『孟子』の「梁恵王(りょうけいおう)上」に由来します。
斉の宣王が、覇者(天下を治める者)になりたいと孟子に相談した際、孟子が王のやり方では無理だと諭した言葉が元になっています。
孟子は、当時の斉の国の現状と王の政策を「木に縁りて魚を求むがごとし」(木に登って魚を求めるようなもの)と表現し、方法が間違っていると指摘しました。
武力で天下を取ろうとしても、民の心が離れていては不可能であり、仁徳をもって国を治めるべきだと説いたのです。
「縁る」は「よる」と読み、「手段として頼る」という意味です。
「木に縁りて魚を求む」の使い方(例文)
- 「語学の勉強もせずに、海外で活躍したいだなんて、木に縁りて魚を求むようなものだ。」
- 「経験も人脈もないのに、いきなり起業して成功しようとするのは、木に縁りて魚を求むに等しい。」
- 「彼は、練習もせずに試合に勝とうとしている。まさに木に縁りて魚を求むだ。」
- 「木に縁りて魚を求むような計画では、目標達成はおぼつかない。」
- 「的外れな努力を続けるのは、木に縁りて魚を求むのと同じ。やり方を見直すべきだ。」
注意! 間違った使い方
- 「木にのぼりて魚を求む」(✕ 誤用)
→ 正しくは「木に縁りて魚を求む」です。
「縁る」は「よる」と読み、ここでは「頼る」「すがる」という意味です。
「木に縁りて魚を求む」の文学作品、小説などの用例
今の世の中の有様は、大国に事(つか)へて小国を苦しめるという風だから、畢竟(ひっきょう)、木に縁りて魚を求むの類(たぐい)で、何時まで経っても目的は達せられぬ。
(夏目漱石「坊っちゃん」)
「木に縁りて魚を求む」の類義語
- 見当違い: 予測や判断が、目標や事実とはずれていること。
- 的外れ:ねらいや目標、質問の趣旨などからずれていること。
- 場違い:その場にふさわしくないこと。
- お門違い:訪ねる家を間違えること。転じて、相手や方向を間違えること。
- ピント外れ:焦点が合っていないこと。転じて、物事の肝心な点を捉えていないこと。
- 見当違いも甚だしい:ひどく見当違いであること
- 糠に釘: 全く効果がないことのたとえ
(「木に縁りて~」は方法の間違い、「糠に釘」は効果の無さを強調) - 暖簾に腕押し: 全く手ごたえや張り合いがないことのたとえ
(「木に縁りて~」は方法の間違い、「暖簾に腕押し」は手ごたえの無さを強調)
「木に縁りて魚を求む」の対義語
直接的な対義語はありませんが、反対の意味を表す言葉としては以下のようなものが挙げられます。
- 理に適う(りにかなう): 道理に合っていること。
- 正鵠を得る(せいこくをえる): 物事の急所を正確にとらえること。
- 順当(じゅんとう):順序や道理にかなっていること。
- 合理的(ごうりてき):無駄なく適切である様子。
使用上の注意点
「木に縁りて魚を求む」は、相手のやり方や考え方が根本的に間違っていることを指摘する言葉です。
そのため、使う相手や状況によっては、失礼にあたったり、相手を傷つけたりする可能性があるので注意が必要です。
特に目上の人に対して使う場合は、より丁寧な表現を用いるか、他の言葉に言い換える方が良いでしょう。
「木に縁りて魚を求む」に類似した英語表現
Barking up the wrong tree.
直訳:間違った木に向かって吠えている。
意味:見当違いなことをしている、方法が間違っている。
例文:
If you think she’ll lend you money, you’re barking up the wrong tree.
(彼女がお金を貸してくれると思っているなら、それは見当違いだよ。)
Fishing in the wrong pond.
直訳:間違った池で魚を釣っている。
意味:見当違いな場所で何かを探している、努力の方向が間違っている。
例文:
He’s looking for a job in advertising, but he’s fishing in the wrong pond by applying to engineering firms.
(彼は広告の仕事を探しているが、エンジニアリング会社に応募するのは見当違いだ。)
まとめ
「木に縁りて魚を求む」は、方法が間違っているために目的を達成できないことを表すことわざです。
中国の古典『孟子』に由来し、現代でもビジネスや日常生活の様々な場面で使われます。
このことわざを教訓として、正しい方法で目標達成を目指すことの重要性を理解しましょう。
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