人の褌で相撲を取る

ことわざ
人の褌で相撲を取る(ひとのふんどしですもうをとる)

14文字の言葉ひ・び・ぴ」から始まる言葉
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「人の褌で相撲を取る」の意味

「人の褌(ふんどし)で相撲を取る」とは、他人の物や地位、機会などを利用して、自分自身の利益や目的を達成しようとすることを意味することわざです。

本来、相撲は自分自身の力と技で勝負するものですが、この言葉では、他人の「褌(ふんどし)」、つまり他人の資本や努力、アイデアなどを借りて、あたかも自分が成し遂げたかのように振る舞う状況を揶揄しています。

多くの場合、労せずに利益を得ようとする、ずる賢い、あるいは他力本願な態度を批判的に表現する際に用いられます。

「人の褌で相撲を取る」の語源

「人の褌で相撲を取る」の語源

このことわざの正確な初出は不明ですが、江戸時代中期以降に一般的に使われるようになったと考えられています。

相撲は日本の国技として古くから親しまれており、「褌」は力士が身につける最も象徴的なものです。自分のものではない褌を締めて土俵に上がるというありえない状況を比喩として用いることで、「他人のものを利用して自分の利益を図る」という行為のおかしさや潔くない様子を強調しています。

特別な由来となる物語があるわけではありませんが、相撲という庶民に身近な題材を用いることで、多くの人々にその意味するところが直感的に理解され、広く使われるようになったのでしょう。

「人の褌で相撲を取る」の使用される場面と例文

「人の褌で相撲を取る」は、他人の成果やアイデア、立場などを利用して、自分の手柄にしたり、利益を得たりする状況で使われます。
ビジネスシーンで他部署の成果を自分の部署の手柄のように報告したり、友人のアイデアをあたかも自分が考えたかのように話したりする場面などが考えられます。
他人の努力に便乗する、ずる賢い行為を指摘する際に用いられることが多いでしょう。

例文

  • 「彼はいつも同僚の研究成果を借りてきて、人の褌で相撲を取るような発表ばかりしている。」
  • 「資金も計画もすべて親会社頼みとは、まさに人の褌で相撲を取るようなものだ。」
  • 「友人のコネを使って就職活動を進めるのは、少し人の褌で相撲を取るようで気が引ける。」
  • 「あのプロジェクトの成功は、Aさんのアイデアがあったからこそなのに、部長は人の褌で相撲を取って自分の昇進につなげた。」

「人の褌で相撲を取る」の類義語

  • 虎の威を借る狐:他人の権勢を頼って威張ることのたとえ。
    権力者に便乗するニュアンスが強い。
  • 他人の飯を食う(たにんのめしをくう):他人の世話になって生活すること。
    必ずしもネガティブな意味だけではなく、社会経験を積むという意味で使われることもある。
  • 棚からぼた餅:思いがけない幸運が舞い込むことのたとえ。
    努力せずに利益を得る点は似ているが、「人の褌~」のような意図的な利用やずる賢さのニュアンスは薄い。

「人の褌で相撲を取る」の対義語

  • 自力更生(じりきこうせい):他人の力を借りずに、自分の力で生活や事業を成り立たせていくこと。
  • 独立独歩(どくりつどっぽ):他人に頼らず、自分の信じる道を進むこと。
  • 自前:他人に頼らず、自分自身で必要なものを準備したり、費用を負担したりすること。

※ これらの言葉は、他者に依存せず、自身の力で物事を成し遂げようとする点で、「人の褌で相撲を取る」とは対極的な姿勢を示します。

「人の褌で相撲を取る」の英語での類似表現

英語には完全に一致することわざはありませんが、似たような状況を表す表現があります。

  • ride on someone’s coattails
    意味:他人の成功や人気、努力に便乗して利益を得る、おこぼれにあずかる。
  • stand on someone else’s shoulders
    意味:先人や他者の業績・知識を踏み台にして、さらなる発展や発見をすること。
    ※ これは必ずしもネガティブな意味ではなく、「巨人の肩の上に立つ」のように、先人の偉業の上に新たな知見を築くという肯定的な文脈で使われることも多い。
  • take credit for someone else’s work
    意味:他人の仕事の手柄を横取りする。
    より直接的に、他人の功績を自分のものにする行為を指す表現。

まとめ – 「人の褌で相撲を取る」という考え方

「人の褌で相撲を取る」ということわざは、他者の資源や努力を利用して自分の利益を図る行為を、相撲という身近な比喩で巧みに表現しています。

この言葉には、ずる賢さや他力本願といったネガティブな響きが伴うことが多く、実際にそのような状況で使われることがほとんどです。

しかし、見方を変えれば、先人の知恵や他者の協力を得て何かを成し遂げることは、社会発展に不可欠な要素とも言えます。
大切なのは、借りたものへの敬意や感謝を忘れず、それを自身の成長や新たな価値創造へと繋げていく姿勢でしょう。

このことわざは、単に他者を利用する行為を諫めるだけでなく、自立の重要性や他者との適切な関わり方について考えるきっかけを与えてくれる言葉かもしれません。

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