「一寸の光陰軽んずべからず」の意味・語源・由来
意味
一寸の光陰軽んずべからずとは、ほんのわずかな時間も無駄にしてはいけない、時間を大切にせよという教えです。
「一寸」は非常に短い時間のたとえ、「光陰」は時間(特に歳月)を意味します。「軽んずべからず」は「軽んじてはいけない」という意味です。
短い時間であっても、積み重なれば大きなものになるため、無駄に過ごしてはいけないという戒めの言葉として使われます。
語源・由来
このことわざは、中国の唐の時代の詩人・王貞白(おうていはく)の漢詩「白鹿洞(はくろくどう)二首」の一節に由来します。王貞白が白鹿洞書院で学んでいた際に詠んだ詩であり、学問に励む日々の中で時間の貴重さを感じていたことが伺えます。
ただし、元の漢詩には「一寸光陰一寸金」(いっすんのこういんいっすんのきん)とあり、「一寸の光陰軽んずべからず」という言葉は直接的には出てきません。
「白鹿洞二首 其二」の書き出しは以下の通りです。
讀書不覺已春深 (読書 覚えず 已に春の深きを)
一寸光陰一寸金 (一寸の光陰 一寸の金)
現代語訳:読書に夢中になっていると、いつの間にか春が深まっていることに気づかない。わずかな時間は、わずかな金に値する(ほど貴重である)。
ちなみに、「其一」にも「一寸の光陰軽んずべからず」と同じような意味が込められた一節があります。
この「一寸光陰一寸金」が、日本では「一寸の光陰、軽んずべからず」という形で広まり、時間を大切にすることの教えとして定着しました。
「一寸の光陰、一寸の金」は「わずかな時間も金に値するほど貴重である」という意味ですが、「一寸の光陰、軽んずべからず」は、さらに一歩踏み込んで「だから無駄にしてはいけない」という教訓的な意味合いを強めています。
「一寸の光陰軽んずべからず」の使い方(例文)
- 「一寸の光陰軽んずべからずと言うから、時間を無駄にしないように勉強しよう。」
- 「試験まであとわずかだ。一寸の光陰軽んずべからずの精神で頑張ろう。」
- 「一寸の光陰軽んずべからず。若い頃の時間を大切にしなさい。」
- 「仕事中は、一寸の光陰軽んずべからずの気持ちで集中して取り組む。」
- 「一寸の光陰軽んずべからずという言葉を胸に、日々を大切に生きている。」
「一寸の光陰軽んずべからず」の類義語
- 時は金なり:時間はお金と同じくらい貴重である。(英語のことわざ Time is money.の訳語)
- 光陰矢の如し:月日が経つのは、矢が飛ぶように早い。(時間の流れの速さを強調)
- 歳月人を待たず:時間は人の都合に関係なく過ぎていく。(出典:陶淵明の詩。時間の流れの普遍性を強調)
- 少年老い易く学成り難し:若いうちはすぐに年を取り、学問はなかなか成就しないので、時間を大切にせよという教え。
(出典:朱熹の「偶成」。時間の大切さと学問の難しさを強調)
「一寸の光陰軽んずべからず」の対義語
- 時間を浪費する:時間を無駄に使うこと
- 無為に過ごす:何もせず、ぼんやりと時間を過ごすこと。
「一寸の光陰軽んずべからず」を実践する行動
- 寸暇を惜しむ:わずかな時間も惜しんで何かに打ち込む様子
使用上の注意点
「一寸の光陰軽んずべからず」は、時間を大切にすることの重要性を説く、教訓的なことわざです。
目上の人から目下の人に対して、あるいは教師が生徒に対して使うことが多い言葉です。
友人同士の会話など、カジュアルな場面ではあまり使われません。
「一寸の光陰軽んずべからず」に類似した英語表現
Time is money.
直訳:時は金なり
意味:時間はお金と同じくらい貴重である。
例文:
Remember, time is money, so don’t waste it.
(時は金なりということを忘れずに、無駄にしないように。)
Time is of the essence.
直訳:時間が本質である
意味:時間が非常に重要である、時間がない。
例文:
We need to finish this project quickly. Time is of the essence.
(このプロジェクトは早く終わらせる必要がある。時間がないんだ。)
Make hay while the sun shines.
直訳:日が照っているうちに干し草を作れ
意味:機会を逃さずに行動せよ、時間を有効に使え。
Time and tide wait for no man.
直訳:時間と潮の満ち引きは人を待たない
意味:歳月人を待たず(時間や機会は人の都合を待ってくれない)
まとめ
「一寸の光陰軽んずべからず」は、ほんのわずかな時間も無駄にしてはいけない、時間を大切にせよという教えのことわざです。
中国の漢詩「一寸光陰一寸金」に由来し、日本では「軽んずべからず」という形に変化して広まりました。
時間を大切にすることの重要性を説く、教訓的な言葉として使われます。
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