「憎まれっ子世にはばかる」の意味・語源・由来
意味
「憎まれっ子世にはばかる」とは、人に憎まれるような悪い子に限って、世間で幅を利かせていることが多い、という皮肉を込めたことわざです。
ずる賢い人や厚かましい人が、世渡り上手であったり、出世したりすることを揶揄する意味合いも含まれます。
一般的には、世の中の不条理さを嘆いたり、反道徳的な行為を戒めたりする際に使われます。
語源・由来
「憎まれっ子」は、人に憎まれるような子、つまり、わがままであったり、人に迷惑をかけたりするような子を指します。
「はばかる」は、「幅を利かせる」「勢力を張る」という意味です。
このことわざの語源は明確ではありませんが、昔から、世の中の不条理さや、ずる賢い人が得をすることが多いという現実を、皮肉を込めて表現した言葉として使われてきたと考えられます。
具体的なエピソードや出典は特定されていません。
「憎まれっ子世にはばかる」の使い方(例文)
- 「あんなに横暴だった彼が出世するなんて、憎まれっ子世にはばかるとはこのことだ。」
- 「ずる賢いことばかりしている彼が成功しているのを見ると、憎まれっ子世にはばかるという言葉を思い出す。」
- 「ルールを守らない人ほど得をしている気がする。憎まれっ子世にはばかるとはよく言ったものだ。」
- 「彼女はいつも他人を蹴落としてばかりいるのに、なぜか評価が高い。まさに憎まれっ子世にはばかるだ。」
- 「不正を働いていた会社が、なぜか業績を伸ばしている。憎まれっ子世にはばかるとしか言いようがない。」
注意! 間違った使い方、間違いやすい読み方
「憎まれっ子」を「憎まれっこ」と省略して言うこともありますが、これは話し言葉として使われることが多く、書き言葉としては「憎まれっ子」が一般的です。
また、「はばかる」を「はばかり」と間違えるケースも見受けられますが、正しくは「はばかる」です。
「憎まれっ子世にはばかる」の文学作品どの使用例
夏目漱石の『坊っちゃん』に、以下の記述があります。
山嵐は強情だが正直な男で、赤シャツは狡猾だが、見かけは温順《おとな》しい。ことに赤シャツは山出しの野暮を軽蔑している癖に、野暮を装うのが得意だ。憎まれっ子世に憚ると云う奴《やつ》だ。
「憎まれっ子世にはばかる」の類義語・関連表現
類義語(ことわざ・慣用句)
- 正直者が馬鹿を見る:正直で真面目な人ほど損をすることが多いというたとえ。
- 出る杭は打たれる:才能や能力があって目立つ人は、他人から妬まれ、妨害されたり非難されたりする。
関連する概念・心理
このことわざは、「不公平感」や「不条理」と深く結びついています。以下の言葉も関連性が高いです。
- 世渡り上手:「要領がいい」「立ち回りがうまい」「ちゃっかりしている」
- 嫉妬・妬み:「やっかみ」「ひがみ」「そねみ」
- 反道徳的行為:「不正」「ごまかし」「裏切り」
「憎まれっ子世にはばかる」の類義語
- 正直者が馬鹿を見る:正直で真面目な人ほど損をすることが多いというたとえ。
- 悪貨は良貨を駆逐する:悪いものがはびこると、良いものが滅びる。
- 世間ずれ(している):世の中の裏表を知っていて、ずるがしこく立ち回ること。
「憎まれっ子世にはばかる」の対義語
- 正直の頭に神宿る(しょうじきのこうべにかみやどる):正直な人は、いずれ必ず神仏の加護があること。
- 果報は寝て待て:幸運は、焦らずに気長に待つのが良い。
- 大器晩成:大人物は、若い頃は目立たなくても、晩年に大成する。
使用上の注意点
このことわざは、世の中の不条理さを嘆いたり、反道徳的な行為を戒めたりする際に使われますが、
あまりにも直接的に使うと、相手を不快にさせる可能性があるので注意が必要です。
特に、目上の人や、あまり親しくない人に使うのは避けた方が良いでしょう。
「憎まれっ子世にはばかる」に類似した英語表現
The squeaky wheel gets the grease.
直訳:きしむ車輪は油を差される
意味:うるさく主張する者ほど、要求が通りやすい。
例文:
“I hate to say it, but in this company, the squeaky wheel gets the grease.”
(言いたくはないけど、この会社では、うるさい人ほど得をするんだ。)
Nice guys finish last.
直訳:いい人は最後になる
意味:お人好しは損をする
例文:
“It’s a tough world out there. Sometimes, nice guys finish last.”
(世の中は厳しい。時には、いい人が損をすることもある。)
まとめ
「憎まれっ子世にはばかる」は、人に憎まれるような人が、世の中で幅を利かせていることを表すことわざです。
この言葉は、世の中の不条理さや、ずる賢い人が得をすることが多いという現実を、皮肉を込めて表現しています。
日々の生活の中で、不公平だと感じる場面に遭遇した時、「憎まれっ子世にはばかる」という言葉を思い出すこともあるかもしれません。
しかし、このことわざに囚われすぎず、自分自身の信じる道を進むことが大切です。
真面目に努力を続けることが、最終的には報われると信じたいものです。
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