意味
「桃栗三年柿八年」とは、桃と栗は芽が出てから実がなるまで3年、柿は8年かかるという意味の言葉で、何事も成就するには相応の年月がかかるということのたとえです。
また、単に時間をかければ良いというわけではなく、それぞれの特性に応じた努力が必要であるという教訓も含まれていると考えられます。
一般的には「桃栗三年柿八年」までで使われますが、続きがある場合もあります。(後述)
語源・由来
このことわざの正確な初出は不明です。しかし、果樹の栽培経験に基づいた生活の知恵として、古くから人々の間で言い伝えられてきたと考えられています。
桃や栗、柿は、種から育てると実がなるまでに時間がかかる果樹の代表例です。
これらの果樹を育てるには、根気強い努力と時間が必要であることから、物事の成就にも同様の努力と時間が必要であるという教訓として広まったと推測されます。
江戸時代の文献には、すでに同様の表現が見られることから、少なくとも江戸時代には広く使われていたことわざだと言えるでしょう。
なお、実際に果樹を種から栽培した場合、実がなるまでの年数は、品種、栽培環境、接ぎ木などの技術によって大きく異なります。
「桃栗三年柿八年」は、あくまでことわざとして理解し、実際の栽培年数とは区別する必要があります。
使用される場面と例文
「桃栗三年柿八年」は、何かを成し遂げるには時間がかかることを諭したり、努力の継続を促したりする際に使われます。
また、焦らずにじっくりと取り組むことの大切さを伝える際にも用いられることが多いでしょう。
例文
- 新しいプロジェクトの立ち上げは大変だけど、「桃栗三年柿八年」と言うし、焦らずじっくり育てていきましょう。
- 志望校合格には、日々の努力の積み重ねが大切です。「桃栗三年柿八年」の精神で、こつこつと勉強を続けましょう。
- 新しいスキルを習得するには時間がかかるものです。「桃栗三年柿八年」という言葉を胸に、諦めずに練習を続けましょう。
- 「桃栗三年柿八年」と言うように、何事もすぐに結果が出るものではありません。長い目で見て、気長に努力を続けることが大切です。
注意点
このことわざは、一般的な努力目標期間を示す際に例えとして使われる言葉です。
実際の果樹栽培とは異なる意味で用いられるということに注意が必要です。
類義語
- 石の上にも三年:冷たい石の上でも3年も座り続ければ暖まる。つらくても辛抱して続ければ、いつかは必ず報われるというたとえです。
- 雨垂れ石を穿つ:わずかな雨だれでも、長い年月をかけて同じ場所に落ち続ければ、硬い石にも穴をあけることができます。根気よく努力を続ければ、どんな困難なことでも成し遂げられるというたとえです。
- 千里の道も一歩から:どんなに遠い道のりでも、最初の一歩を踏み出すことから始まります。大きな目標を達成するためには、小さな努力を積み重ねることが大切だというたとえです。
- 継続は力なり:平凡なことでも、続けていれば最後には大きな力となる、という意味です。
対義語
- 一朝一夕(いっちょういっせき):わずかな時間。非常に短い期間のことです。
- にわか仕込み(にわかじこみ):短期間で急いで覚えることです。
- インスタント:即席の。手間や時間をかけずに、すぐにできることを指します。
英語表現(類似の表現)
- Rome wasn’t built in a day.
意味:ローマは一日にして成らず。偉大な事業は短期間では完成しない、時間と努力が必要であるという意味です。 - Slow and steady wins the race.
意味:ゆっくり着実に進む者が競争に勝つ。ウサギとカメの童話に由来する表現です。
「桃栗三年柿八年」に続く言葉
「桃栗三年柿八年」の言葉の後には、以下のような続きがある場合があります。
【いろいろな続きのバリエーション】
- 桃栗三年柿八年、柚子は九年でなりさがる
- 桃栗三年柿八年、柚子は遅くて十三年
- 桃栗三年柿八年、柚子の馬鹿目(ばかめ)は十八年
- 桃栗三年柿八年、柚子の大馬鹿十八年
- 桃栗三年柿八年、梅は酸(す)いとて十三年
- 桃栗三年柿八年、梨の馬鹿目(ばかめ)が十八年
- 桃栗三年柿八年、枇杷は九年でなりかねる
- 桃栗三年柿八年、枇杷は九年で登りかねる、梅は酸い酸い十八年
- 桃栗三年柿八年、梅は酸い酸い十三年、梨はゆるゆる十五年、柚子の大馬鹿十八年、蜜柑のまぬけは二十年
これらは、地域や時代によって様々なバリエーションが存在します。
これらの続きの言葉も、それぞれの果樹が実をつけるまでの期間を言い表しており、物事が成就するまでの期間はそれぞれ異なることを示唆していると言えるでしょう。
また、「大馬鹿」など、一見すると否定的な言葉が含まれていますが、これは愛情を込めた表現であり、長い年月をかけて実をつける果樹への愛着を表しているとも解釈できます。
※ これらの続きの句も、ことわざとしてのおおよその年数を表すものであり、実際の栽培年数とは異なることがあります。
まとめ
「桃栗三年柿八年」――― 時は、すべての実りを育む。焦らず、腐らず、怠らず。種を蒔き、根を張り、芽を伸ばし、いつか必ず訪れる収穫の時を信じて。
この古くからの言葉は、私たちに、自然のリズムに寄り添いながら、一歩一歩、着実に歩みを進めることの大切さを教えてくれます。
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