「泥棒を捕らえて縄を綯う」の意味・語源・由来
意味
「泥棒を捕らえて縄を綯う」とは、事が起きてから慌てて準備を始めることのたとえです。
準備不足のまま事態に直面し、手遅れになってしまうことを指します。
また、計画性のなさを指摘するニュアンスがあります。
語源・由来
このことわざは、文字通り、泥棒を捕まえてから、その泥棒を縛るための縄を慌てて作り始める(綯う:なう)様子を表しています。
縄を綯うには、藁や麻などの繊維を撚り合わせていく必要があり、熟練した技術と時間を要する作業でした。
そのため、当然、準備が間に合うはずがありません。
このことから、事前に準備を怠り、事が起きてから慌てふためくことの愚かさを表す言葉として使われるようになりました。
省略語
泥縄(どろなわ):このことわざを省略した表現で、同じ意味で用いられます。
「泥縄式」という形で使われることも多いです。
「泥棒を捕らえて縄を綯う」の使い方(例文)
- 「試験前日になってから慌てて勉強を始めるなんて、泥棒を捕らえて縄を綯うようなものだ。」
- 「彼はいつも、問題が起こってから対処法を考える。まさに泥棒を捕らえて縄を綯うタイプだ。」
- 「災害対策は、実際に災害が起きてからでは遅い。泥棒を捕らえて縄を綯うことにならないように、日頃から備えが必要だ。」
- 「プレゼン本番で資料の不備に気づくとは…。泥棒を捕らえて縄を綯うとはこのことだ。」
- 「企業のサーバーがサイバー攻撃を受けた後に、ようやくセキュリティ対策を強化したのは、まさに泥棒を捕らえて縄を綯うだ。」
- 「政府が物価高対策を発表したが、すでに庶民の生活は厳しくなっている。これでは泥縄式の対応になりかねない。」
「泥棒を捕らえて縄を綯う」の類義語・関連表現
類義語(ことわざ・慣用句)
- 泥船で渡る:計画性がなく無謀なことをする。
- 思い立ったが吉日:準備不足でもとりあえず始めることを良しとする考え。
- 後の祭り:時期遅れで手遅れなこと。
- 六日の菖蒲、十日の菊(むいかのあやめ、とおかのきく):時期に遅れて役に立たないもののたとえ。
関連する概念・心理
このことわざは、「準備」や「計画性」の重要性を示すものです。以下の言葉も関連性が高いです。
- 事前準備:「段取り」「下準備」「備えあれば憂いなし」
- 計画性:「先見の明」「見通し」「スケジュール管理」
- 危機管理:「リスクマネジメント」「リスクヘッジ」「不測の事態」
- 泥縄式:直前になって慌てて対策を講じること(ビジネスや災害対応などでよく使われる表現)。
「泥棒を捕らえて縄を綯う」の対義語
- 備えあれば憂いなし:事前に準備をしておけば、いざというときも心配ないこと。
- 先んずれば人を制す:人より先に物事を始めれば、有利な立場に立てること。
- 転ばぬ先の杖:前もって用心していれば、失敗することがないということ。
使用上の注意点
「泥棒を捕らえて縄を綯う」は、準備不足や対応の遅れを指摘する際に使われることわざです。
相手の行動を批判するニュアンスが強いため、状況によっては失礼に聞こえることもあります。
ビジネスやフォーマルな場では、「もう少し余裕を持って準備すると良さそうですね」など、
柔らかい表現に言い換えるのが望ましいでしょう。
また、個人のミスを責めるのではなく、チーム全体の課題として
「今後は事前準備を徹底しよう」と前向きな提案につなげることで、建設的な会話ができます。
「泥棒を捕らえて縄を綯う」に類似した英語表現
Lock the stable door after the horse has bolted.
直訳:馬が逃げた後で馬小屋の扉を閉める。
意味:手遅れ、後の祭り、泥棒を捕らえて縄を綯う。
例文:
He only started to revise for the exam the night before. It was like locking the stable door after the horse has bolted.
(彼は試験の前夜になってやっと復習を始めた。それは、泥棒を捕らえて縄を綯うようなものだった。)
To be caught with one’s pants down.
直訳:ズボンを下げた状態で捕まる
意味:不意を突かれる、準備不足
まとめ
「泥棒を捕らえて縄を綯う」は、事前の準備を怠り、いざ問題が発生してから慌てて対処することを意味することわざです。
この言葉は、計画性のなさや危機管理の重要性を指摘する際によく使われます。
特に仕事や勉強、災害対策、経営戦略など、さまざまな場面で「備えあれば憂いなし」の精神が求められます。
一方で、相手の行動を批判するニュアンスが強いため、使い方には注意が必要です。
相手を責めるのではなく、「早めの準備が大切ですね」といった前向きな表現に置き換えるのも有効でしょう。
計画的に物事を進め、手遅れにならないよう心がけたいものです。
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