意味
「備えあれば憂いなし」とは、事前に準備をしておけば、いざという時に心配事がない、という意味のことわざです。
普段からの心がけが大切だという教訓を含んでいます。
語源・由来
「備えあれば憂いなし」の正確な初出は不明ですが、中国の古典に由来するという説が有力です。
「書経」(五子之歌)説
中国最古の歴史書である『書経』の「五子之歌」の中に、「安きに居りて危うきを思う、思うはすなわち備えあり、備えあれば患いなし(安居而思危、思則有備、有備無患)」という一節があります。
これが「備えあれば憂いなし」の元になったという説です。
ただし、「患い」は「憂い」よりももっと深刻な「わざわい」を意味する言葉です。
「春秋左氏伝」説
中国の歴史書『春秋左氏伝』には、「居安思危、思則有備、有備無患」(安きに居りて危うきを思う、思えば則ち備え有り、備え有れば患い無し)という記述があります。
「五子之歌」とほぼ同じ意味ですが、より「備えあれば憂いなし」の形に近いです。
いずれにしても、平和な時でも常に危機意識を持ち、準備を怠らなければ、いざという時に困らない、という考え方が根底にあります。
使用される場面と例文
「備えあれば憂いなし」は、災害、仕事、勉強、人間関係など、さまざまな場面で使われます。
日頃からの準備や心がけの大切さを説く際に用いられます。
例文
- 「テスト前にしっかり勉強しておけば、備えあれば憂いなしだよ。」
- 「災害に備えて、非常用持ち出し袋を準備しておこう。備えあれば憂いなしだ。」
- 「プレゼンテーションの前に、質問を予測して回答を準備しておくといい。備えあれば憂いなしだよ。」
- 「健康診断を定期的に受けて、早期発見・早期治療を心がけよう。備えあれば憂いなしだ。」
類義語
- 転ばぬ先の杖:失敗しないように、前もって用心すること。
- 石橋を叩いて渡る:非常に用心深く、安全を確認して行動すること。
- 念には念を入れる:注意した上に、さらに注意すること。
- 先んずれば人を制す:人より先に事を始めれば、有利な立場に立てる。
- 用意周到:準備が十分に行き届いていること。
関連する心理学の概念
- 正常性バイアス:予期せぬ事態に直面した際に、それを正常の範囲内としてとらえ、都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう、人間の心理的傾向のこと。
「備えあれば憂いなし」の考え方は、この正常性バイアスを克服する上で役に立ちます。
対義語
- 取らぬ狸の皮算用:まだ手に入れていないものをあてにして、計画を立てること。
- 案ずるより産むが易し:心配するよりも、実際にやってみると案外簡単であること。
- 行き当たりばったり:計画もなく、その場の成り行きに任せること。
- 後悔先に立たず(こうかいさきにたたず):事が終わった後で後悔しても、取り返しがつかないこと。
- 無計画:計画がないこと。
英語表現
- Be prepared.
意味:準備しておきなさい。ボーイスカウトのモットーとしても有名です。 - Better safe than sorry.
意味:後で後悔するよりも、安全策を取る方が良い。 - Prevention is better than cure.
意味:治療よりも予防の方が良い。
まとめ
「備えあれば憂いなし」は、日頃からの準備や心がけが大切だという教訓を表すことわざです。
災害対策、仕事の準備、健康管理など、様々な場面でこの言葉を思い出し、行動することが、より良い結果に繋がる可能性を高めることを示唆しています。
「備えあれば憂いなし」の精神は、リスクマネジメントの基本とも言えるでしょう。
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