意味
「花より団子」とは、美しい花を眺めるよりも、実際に食べられる団子を選ぶことから、風流よりも実利、外見よりも実質を重視すること のたとえです。
精神的な満足よりも物質的な満足を優先する人間の本質を表しているとも言えます。
語源・由来
「花より団子」の正確な初出は不明ですが、江戸時代にはすでに広く使われていた と考えられています。
このことわざにおける「花」は、主に桜の花見を指します。
江戸時代の庶民にとって花見は一大イベントでしたが、桜を愛でるだけでなく、屋台で売られる団子や酒などの飲食も大きな楽しみでした。
このことから、美しい花を眺める風流な行為よりも、実際に食べられる団子の方が良い、という庶民感覚を表した言葉として広まったと考えられます。
使用される場面と例文
「花より団子」は、見た目や名声よりも実利を重視する場面 や、精神的な満足よりも物質的な満足を優先する場面 で使われます。
例文
- 彼は高級レストランの雰囲気よりも、安くて美味しい定食屋を選ぶ、「花より団子」タイプだ。
- 彼女はブランドバッグより、機能的で丈夫なリュックサックを選ぶ。まさに「花より団子」だ。
- 「花より団子」で、お土産はきれいな置物より、美味しいお菓子の方が喜ばれる。
- 選挙の時も、候補者の理念より、実質的な経済政策を重視する「花より団子」の有権者が多い。
文学作品等での使用例
「いや、もう、なんでも、花より団子とやらで、つまりはその、実入りのあるほうが結構でさ。」
太宰治の『津軽』で使用されています。
この場面では、理屈や体面よりも、実益がある方が良いという意味合いで使われています。
類義語
- 絵に描いた餅:絵に描いた餅は食べられないことから、役に立たないもの、無用の長物のたとえ。
- 月夜に提灯:明るい月夜には提灯は不要であることから、無用なもののたとえ。
- 実を取る:外見よりも内容を重んじること。
- 実利主義:観念的なものよりも実際の利益を重んじる考え方。
関連する経済学の概念
- 効用(utility):
経済学では、消費者が財やサービスから得る満足度を「効用」と呼びます。
「花より団子」は、花見という体験から得られる効用 よりも、団子を食べることで得られる効用の方が高い と判断する状況を表しているといえます。
対義語
- 名を惜しむ:自分の名誉や名声を大切にすること。
- 痩せ我慢:実利よりも体裁や信念を貫こうとすること。
- 形而上学(けいじじょうがく):感覚や経験を超越した、観念的な学問や思考。
英語表現(類似の表現)
- Bread is better than the songs of birds.
直訳:パンは鳥のさえずりよりも良い。
意味:美しい音楽よりも、食べられるパンの方が価値がある、という意味です。 - Pudding before praise.
意味:称賛よりも先にプリン(報酬)。
具体的な報酬が、抽象的な称賛よりも重要だという考え方を示します。 - Substance over form.
意味:形式よりも実質。
見た目や形式よりも、中身や実質的な価値を重視することを表します。
まとめ
「花より団子」は、風流よりも実利を、外見よりも実質を重視することのたとえです。
美しい花よりも、食べられる団子を選ぶという、人間の本能的な欲求を表しています。
精神的な満足よりも物質的な満足を優先する場面で使われ、現代社会でも、さまざまな状況でこの言葉が当てはまるでしょう。
しかし、時には実利ばかりでなく、美しいもの、精神的な豊かさを求めることも大切かもしれません。
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