泣く子と地頭には勝てぬ

ことわざ 慣用句
泣く子と地頭には勝てぬ(なくことじとうにはかてぬ)

12文字の言葉」から始まる言葉
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意味・教訓

「泣く子と地頭には勝てぬ」とは、道理の通じない相手や、権力者には、何を言っても無駄であり、かなわないという意味のことわざです。
泣きわめく子どもと、力を持つ地頭(中世の荘園領主)は、理屈で抑えつけることができないものの代表として挙げられています。
我を通そうとする者や、権力に逆らっても無駄であるという、諦めと教訓が込められています。

語源・由来

このことわざは、理不尽な力を持つ相手には抵抗できないことを表現しています。

「泣く子」は、論理的な説得が通じない存在の象徴です。
「地頭」とは、鎌倉・室町時代に荘園や公領を管理支配した役職のことで、年貢の取り立てなどに強大な権力を持っていました。

これら二つを対比させることで、道理の通じない相手に対抗することの無力さを簡潔に表現しています。
このことわざの初出は定かではありませんが、室町時代末期には同様の表現が使われていたことが記録に残っています。

地頭の意味の変遷

「地頭」という言葉は、時代とともにその意味を変えてきました:

  1. 平安時代末期: 荘園の開発領主や在地領主を指す言葉として登場しました。
  2. 鎌倉時代: 幕府から任命された荘園や公領の管理者として、年貢徴収や治安維持に関する強い権限を持っていました。
  3. 室町時代: 守護大名の台頭に伴い、地頭の権限は徐々に弱まりましたが、一部の地域では依然として影響力を保っていました。
  4. 江戸時代: 地頭という言葉は、村役人や名主など、地方の有力者を指す言葉として残りました。

このことわざで描かれる「地頭」は、強大な権力を持った地頭のイメージに基づいています。
「地頭」の意味合いは、時代とともに変化しましたが、いずれにしても「逆らえない権力者」という象徴的な意味で用いられています。

使用される場面と例文

「泣く子と地頭には勝てぬ」は、理不尽な要求をする人や、権力を振りかざす人に、何を言っても無駄だと諦める場面で使われます。
また、そのような状況を、第三者に説明する際にも用いられます。

例文

  • 「いくら説明しても、お客様は納得してくれない。泣く子と地頭には勝てぬとは、このことだ。」
  • 「社長の鶴の一声で、プロジェクトが中止になった。泣く子と地頭には勝てぬとは言うけれど、納得がいかない。」
  • 「あのクレーマーは、何を言っても聞く耳を持たない。泣く子と地頭には勝てぬと諦めるしかない。」
  • 「上司の命令には逆らえない。泣く子と地頭には勝てぬ、か…。」

類義語

  • 無理が通れば道理引っ込む:道理に合わないことがまかり通るようになると、道理にかなったことは通用しなくなる。
  • 長い物には巻かれろ:権力のある人には、逆らわない方が得策である。
  • 寄らば大樹の陰:どうせ頼るなら、勢力のある人のほうが安全で、いろいろな面で利益も期待できるというたとえ。
  • 勝てば官軍負ければ賊軍(かてばかんぐんまければぞくぐん): 戦いに勝った者が正義であり、負けた者は悪とされること。結果が全てであり、過程や真実は問題にされないという意味。
    (「泣く子と地頭には勝てぬ」と同様に、力を持つ者には逆らえないという点で共通している。)

関連語

関連する社会学の概念

  • 権力: 他者を強制し、自己の意思を実現する力。

対義語

  • 理詰め(りづめ): 理屈で相手を納得させようとすること。
    (「泣く子と地頭」は、理詰めが通用しない相手を表すため、対照的な言葉とも言えます。)

英語表現(類似の表現)

  • You can’t fight City Hall.
    直訳:市役所とは戦えない。
    意味:権力には逆らえないということ。
  • Might makes right.
    意味:力は正義なり。権力のある者が正しいとされること。

使用上の注意点

「泣く子と地頭には勝てぬ」は、諦めの気持ちを表す言葉であり、問題解決を放棄する姿勢にもつながりかねません。
状況によっては、このことわざを鵜呑みにせず、解決策を探る努力も必要です。

まとめ

「泣く子と地頭には勝てぬ」は、道理の通じない相手や、権力者にはかなわないという、諦めと教訓を表すことわざです。
この言葉は、理不尽な状況に直面した時の、やるせなさを表すとともに、そのような状況を、ある程度受け入れることの必要性も示唆しています。
しかし、全てを諦めるのではなく、状況を改善するための努力を怠らないことも大切です。
このことわざを、状況判断の材料の一つとして、賢く使いこなしたいものです。

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