見ざる聞かざる言わざる

ことわざ 慣用句
見ざる聞かざる言わざる(みざるきかざるいわざる)
短縮形:三猿

11文字の言葉」から始まる言葉
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意味・教訓

「見ざる・聞かざる・言わざる」とは、自分にとって不都合なことや、他人の欠点、面倒ごとに関わらないほうが平穏に過ごせる という教訓を表す言葉です。

「ざる」は否定の助動詞「ず」の連体形であり、「見ざる、聞かざる、言わざる」は、それぞれ 「見ない」「聞かない」「言わない」 という意味になります。

この三つの「~しない」を実践することで、余計なトラブルを避け、円滑な人間関係を築く知恵 として受け継がれてきました。

語源・由来

「見ざる・聞かざる・言わざる」の考え方は、古代中国の思想や仏教の教えに由来するとされています。
中でも最も有名なのが、栃木県日光市の日光東照宮にある三猿の彫刻です。

この彫刻は、左甚五郎の作と伝えられています。(…が、実は確証はありません。)
三匹の猿がそれぞれ 目・耳・口を手で覆う姿 をしており、「悪いことを見ない・聞かない・言わない」 という教えを象徴しています。

三猿にはいくつかの解釈があります。

  • 教育的な意味:子どものうちは悪いことを見聞きせず、悪い言葉を使わないように育てるべき、という教え。
  • 人生の知恵:余計なことを見たり聞いたり言ったりしないことで、災いを避ける知恵を表している。

三猿の起源にはさまざまな説があります。
古代インドや中国に由来する と考えられるほか、シルクロードを経由して日本に伝わった という説もあります。
さらに、中国の道教には「三尸(さんし)」という教えがあり、これが三猿の思想と関連している可能性も指摘されています。

日本では、仏教(特に天台宗)とともに三猿の思想が伝わったという説が有力とされています。

日光東照宮の三猿
日光東照宮にある三猿の彫刻

使用上の注意点

「見ざる・聞かざる・言わざる」は、本来「余計なトラブルを避ける知恵」ですが、時には 見て見ぬふりをする言い訳や責任逃れに使われることもあります。

特に、社会的な問題や不正行為に対して沈黙を貫くことは、結果的に問題を放置し、悪化させる原因になりかねません。

例:

  • 職場でのパワハラを見て見ぬふりをする
  • 政治家の汚職を知りながら黙認する

「見ざる・聞かざる・言わざる」が本当に適切な場面なのか、それとも勇気を持って行動すべきなのか、状況を見極めて判断することが大切です。

使用される場面と例文

「見ざる・聞かざる・言わざる」は、以下のような場面で使われます。

  • 他人の秘密やプライベートに深入りしないよう忠告する時
  • 職場のゴシップや噂話に巻き込まれないよう自戒する時
  • 問題を見て見ぬふりする人や、都合の悪いことを口にしない人を皮肉る時

状況によっては、慎重な態度を示す言葉としても、皮肉や批判の意味を込めた表現としても使われることがあります。

例文

  • 「隣の家の夫婦喧嘩には、余計な口を挟まず『見ざる・聞かざる・言わざる』が一番だ。」
  • 「会社の派閥争いには関わらず、あえて『見ざる・聞かざる・言わざる』を貫くことにした。」
  • 「彼は、どんな問題が起きても常に『見ざる・聞かざる・言わざる』の姿勢を崩さない。」
  • 「政治家の汚職疑惑に対して、国民はもはや『見ざる・聞かざる・言わざる』では済まされない。」

文学作品等での使用例

夏目漱石の小説『草枕』には、以下のような記述があります。

 奥歯を噛んで、面をあげて、鼻から息を熱く吐き出すと、両肌脱いで、見ざる、聞かざる、言わざるの三匹の猿になる。

この一節では、主人公が世俗の煩わしさから逃れ、無関心な態度をとろうとする様子が、「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿に例えられています。

類義語

  • 触らぬ神に祟りなし(さわらぬかみにたたりなし):余計な手出しをしなければ災いを招くこともない、ということ。
  • 知らぬが仏:知らないでいる方が、余計な心配や苦労をしなくて済む、ということ。
  • 沈黙は金(ちんもくはきん):余計なことを言わないほうが価値がある、ということ。
  • 臭いものに蓋をする(くさいものにふたをする):都合の悪いことや不祥事を隠蔽すること。
  • 見て見ぬ振り:見ていながら見ないふりをすること。

関連する心理学の概念

  • 防衛機制: 不安や葛藤から自分を守るために、無意識のうちに行う心理的な反応。
  • 認知的不協和: 自分の信念や態度と矛盾する情報に接したときに生じる不快感。

対義語

  • 直言実行(ちょくげんじっこう): 思ったことを率直に言い、実行すること。
  • 見て見ぬ振りはしない/できない: 問題を見て、見て見ぬ振りをすることができない様子。
  • 馬耳東風(ばじとうふう):人の意見や批評を全く聞き入れないこと。
    (※「聞かざる」の反対の意味合い)

英語表現(類似の表現)

  • See no evil, hear no evil, speak no evil
    直訳:悪を見ない、悪を聞かない、悪を言わない。
    意味:見てはいけないもの、聞いてはいけないもの、言ってはいけないものがあるという教え。
  • turn a blind eye
    意味:見て見ぬふりをする。
  • ignorance is bliss
    意味:知らない方が幸せである。

まとめ

「見ざる・聞かざる・言わざる」は、人間関係を円滑にし、余計なトラブルを避けるための知恵として古くから伝えられてきました。しかし、現代では必ずしも「見て見ぬふり」が最善とは限りません。

大切なのは、状況を冷静に見極め、沈黙を貫くべき時と、勇気を持って声を上げるべき時のバランスを取ることです。
単なる処世術としてではなく、この言葉の本質を深く理解し、適切に活用することが求められます。

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