意味・教訓
「木菟引きが木菟に引かれる(みみずくひきがみみずくにひかれる)」とは、能力や判断力が不足している者が、同じように能力や判断力が不足している者に誘われたり、同調したりすることのたとえです。
また、自分自身の欠点や未熟さに気づかず、同じような欠点や未熟さを持つ人に共感したり、惹かれたりすることのたとえでもあります。
木菟(みみずく)はフクロウに似た鳥で、夜行性で「ホーホー」と鳴く、どこか間が抜けた印象を与える鳥です。
このことわざは、自分も木菟のようなものなのに、他の木菟に誘われてしまうという滑稽さを表しています。

語源・由来
「木菟引き(ミミズクヒキ)」とは、ことわざの中で使われる、ミミズクを使って他の鳥をおびき寄せる架空の猟師のことです。
ミミズクの鳴き真似をして他の鳥を呼び寄せ、黐(もち)や網で捕らえる方法です。
しかし、このことわざでは、木菟引き(木菟を使って鳥を捕まえる人)自身が、別のミミズク(の鳴き声)に誘われてしまう様子を表しています。
つまり、人を騙そうとする者が、逆に自分が騙される側になってしまうという皮肉が込められています。
使用される場面と例文
「木菟引きが木菟に引かれる」は、人を騙そうとしたり、出し抜こうとしたりする人が、逆に自分が罠にはまってしまうような場面で使われます。
また、自分の欠点に気づかず、同じような欠点を持つ人に同調してしまう状況を指すこともあります。
例文
- 詐欺師が別の詐欺師に騙されるなんて、木菟引きが木菟に引かれるような話だ。
(人を騙そうとした人が、逆に騙される場面) - 彼女はいつもダメ男ばかり好きになる。まさに木菟引きが木菟に引かれるだ。
(自分の欠点に気づかず、同じような欠点を持つ人に惹かれる場面) - 悪知恵を働かせて他人を陥れようとしたが、結局自分が損をした。木菟引きが木菟に引かれるとはこのことだ。
- 彼はいつも人の欠点ばかり指摘するが、自分も同じ欠点を持っていることに気づいていない。木菟引きが木菟に引かれるとは彼のことだろう。
類義語
- 【人をだまそうとして自分がだまされる】
- ミイラ取りがミイラになる:人を捜しに行った者が、そのまま帰ってこなくなること。転じて、人を説得に行った者が、逆に相手に説得されてしまうこと。
- 策士策に溺れる:策略に長けた者ほど、自分の策略に頼りすぎて失敗すること。
- 【自分も同じ欠点を持っている】
- 目糞鼻糞を笑う:自分の欠点に気づかず、他人の同じような欠点をあざ笑うこと。
- 【結果的に両方とも損をする】
- 共倒れ:両者とも倒れること。
- 【少し文脈が異なるが、関連することわざ】
- 漁夫の利:二者が争っている間に、第三者が利益を横取りすること。
- 足を掬われる(あしをすくわれる):油断している隙に、不意に攻撃されて失敗すること。
関連する心理学の概念
- 確証バイアス:
自分の考えや信念を裏付ける情報ばかりを集め、反証する情報を無視したり軽視したりする傾向。
対義語
- 他山の石:他人の良くない言動を見て、自分の戒めとすること。
- 人の振り見て我が振り直せ:他人の行動を見て、自分の行動を反省し改めること。
関連語
英語表現(類似の表現)
- The biter bit
直訳:噛みつく者が噛みつかれる。
意味:人を傷つけようとする者が、逆に自分が傷つけられること。 - Hoist with his own petard
直訳:自分の爆弾で吹き飛ばされる。
意味:自分の仕掛けた罠で自分がダメージを受けること。(シェイクスピアの『ハムレット』に由来する表現で、より文語的な響き) - The pot calling the kettle black.
意味:自分の欠点を棚に上げて他人を非難すること。(鍋が釜を黒いと言う)
まとめ
「木菟引きが木菟に引かれる」は、人を騙そうとする者が逆に騙されたり、自分の欠点に気づかず同じ欠点を持つ人に惹かれたりする様子を表すことわざです。
このことわざは、私たちに、他人を出し抜こうとする前に、まず自分自身を見つめ直すことの大切さを教えてくれます。
人を欺こうとすれば、結局は自分に返ってくる、他人の欠点を笑う前に、自分の欠点を直すことが重要だという教訓と言えるでしょう。
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